せどり男爵数奇譚

せどり男爵数奇譚

著者
梶山 季之
発売日
2000年6月6日

これは、活字の魅力なんてもんでは、決してない。本なんです。書物なんです。(p285)

せどり男爵こと笠井菊哉が出会う事件の数々を描いた小説になります。
この本に出てくる人々は、本の内容に惹かれているのではなく、書物それ自体に惹かれて魅入られた人々たちの話が6編収録されている。

各編は次のようになっています。
ちなみに各話の変わったタイトルは麻雀の役とのことです

色模様一気通貫

  • せどり男爵こと笠井菊哉の古書との出会いと童貞喪失
  • 数冊のシリーズもので一組でも欠けていると価値が下がる
    • なのでこの1冊を血眼になりながら探し出す
  • ワ印:春画
  • 古書にハマったキッカケはある老人との出会い
    • そこでワ印にも出会う

半狂乱三色同順

  • 3冊の「ふらんす物語」裏に書かれた文章
  • 大学教授の未亡人が、夫の蔵書を中心に古本屋をひらく
  • 古本屋は北向きになっていなければだめ
    • 日光は書物の大敵
    • 北向きだと不用の客は長居しない
  • 古本仲間は自分の欲しい本には安い値をつけ、売れそうにない本は正確に値踏みしておく
    • ご祝儀代わりに安い値段を付けた本をごっそり買う
    • 同じせどりでも、もっとも悪質な行為であった

春朧夜嶺上開花

  • 古書仲間と韓国へ
  • 古書のセリの話も出てくる
  • 古書の値付け
  • 落丁繰り
    • 5ページずつめくり、奇数がでたら落丁

桜満開十三不塔

  • シェークスピアの初版「フォリオ」
  • ユダヤ商人の夫人
  • 1冊の本を手に入れるための執念
  • 駆け引きが面白い

五月晴九連宝燈

  • ビブリオクラスト
    • 盗書狂
    • 本に対する偏執的な愛着
    • 手に入らなければ、ついつい盗んでしまう

  • われわれみたいなプロになると、店に来た客の顔つき、目配り、歩き方で分かる
    • これは、買うなってことが

水無月十三么九

  • 装丁家の佐渡が、人皮に惹かれるきっかけは...
  • 行為に及んでいる17歳の少女の背中の皮を切り取る
  • 色々変わった装丁の話も出てくる


話のなかで、突然、日本の南進政策はまちがっていて、まずハワイを占領してメキシコと同盟を結び、アメリカ西部の日系人と呼応してアメリカ本土を責めるべきだったなどという大胆な会話が挟まってくる。

これは著者の梶山季之がもともとは週刊誌のトップ屋だったことだろう。週刊誌で記事を書いていた記者がこんな古書に絡めた小説を書けるのも、日々の取材や情報集めで古書店の存在があったことを解説で書かれている。

異常なほど古書に取り憑かれた人々が沢山でてきたり、古書業界についてのルールや逸話が小説に織り込まれており面白かった。

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