多くの文章術の著書がある中村明氏の文章観のエッセンスを一望できる一冊である。
本書の構成は基礎編、応用編、実践編の三つに分かれる。第Ⅰ部「書く」では、相手に正しく伝わる文章を書くための基礎的な技術について書かれている。第Ⅱ部「練る」では、「表現をゆたかに」とあるように小説などでの表現技法について解説されている。第Ⅲ部「研く」では、「文体をしなやかに」とあるように自己のスタイルを確立するまでや、文章の深みといった点について書かれている。
全体として、プロの実例をもとに解説していく流れになる。よりよい文章を書きたい人にもおすすめだが、実例にもある小説についての読み方の視点も変わっていきそうだ。
「センスをみがく」ということは、多く良い文章に触れていくことなのだろう。
本書の見出しをみるだけでもためになりそう。
書く - 文章をはっきりと
- 句読点のルール - 打つも打たぬも思いやり
- 記号類の活用 - 使いすぎは品格をおとす
- 漢字・ひらがな・カタカナの使い分け - 文字に思想をこめて
- 漢字の書き分け - ニュアンスを書き分ける
- ことばの選択 - 三方向から一語にしぼる
- 和語と漢語 - 硬軟おりまぜて
- 擬声語・擬態語 - 感覚の新鮮さがいのち
- 修飾語を効果的に - 適量のさじ加減
- 並列 - 両輪をバランスよく
- 語順と表現意図 - 繰り出し方で感じが変わる
- 文末表現 - 足もとのおしゃれ
- 文構造と文の筋 - 述語は忘れないうちに
- 文の長さ - 手を抜くと文が長くなる
- わかりやすい表現 - 読まれなければ始まらない
- あいまいな表現 - 誤解の芽を摘む
- 文と文との接続 - 関係は書き手がつくる
- 段落づくり - 迷ったら改行する
- 引用を明記する - 借用証書のすすめ
- 敬語表現 - 形式よりも気持ちが問題
- 読者への配慮 - いやいや読む人の身になって
- 執筆態度を明確に - 情報を鼓動とともに
- 構想と展開 - 調理の腕で素材が生きる
- 文章の調子 - こなれがいいほど心になじむ
- 推敲 - 見知らぬ読者になりすます
練る - 表現をゆたかに
- 情報待機 - サスペンスをつくりだす
- 漸層・漸降 - 上りと下りは勢いが違う
- 倒置表現 - 計画的に取り乱す
- 反復法 - 畳みかけて弾みをつける
- 尻取り文 - 展開は鎖のように
- リズムのある文章 - 軽くステップを踏んで
- 対句表現 - 形式美はシンメトリックから
- 挙例法 - 理屈より実感
- 列挙法 - ことばの洪水で圧倒
- 省略法 - 沈黙がものをいう
- 名詞止め - ことばを置き去りにして
- 否定表現 - 打ち消すのもレトリック
- 婉曲表現 - 身もふたもある
- 反語表現 - ばれるように嘘をつく
- 比喩表現 - 心の風景をのぞかせる
- 擬人法 - 万物と語らう
- 洒落 - ことばで遊ぶ
- パロディー - 二重映しの愉しみ
- 現写法 - 臨場感を高める
- 誇張表現 - 望遠レンズで迫力を
- 逆説 - 常識を逆なでする
研く - 文体をしなやかに
- 語感 - ことばのにをいを嗅ぎ分ける
- 書き出し - もう読まずにはいられない
- 結び - ギュッと締めて、フワッと放す
- 書き手の視点 - カメラワークを意のままに
- 人物描写 - のこのこ歩き出す
- 心理描写 - 心のひだを映し出す
- 感覚描写 - イメージに限りなく近づける
- 自然描写 - 風景に体温を添えて
- 表現の深さ - ことばに奥行きを感じるとき
- 表現の間 - 息づかいが聞こえる
- 余韻・余情 - 文章の奥へ、その先へ
- ユーモア - 弱さや愚かしさをしみじみと笑う
- スタイル - 譲れない文体の熟すまで
- 文章の雰囲気 - 表現の奥に人のけはいを聴く