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イギリス的風景: 教養の旅から感性の旅へ
田園の癒す力とは、イギリス人の旅文化によって移入され、滋養された価値化から生まれたと著者は言う。本書は、鉄道による「マス・ツーリズム」が生まれる以前の十八世紀のツーリズムをテーマとする。
最初に「グランド・ツアー」からの考察からはじまる。グランド・ツアーとは、貴族の子弟が社会に出る前に、教育の仕上げとして組み込まれた旅だ。いわゆる、教養旅行と言ってもいいだろう。古典の教養がもっとも具体的に押し出されたのが庭園である。これは理想郷アルカディアへと通じていく。
鉄道による「旅行の民主化」が進んでいくと、今までの教養旅行の意味が薄れていく。旅が旅行に変わり、誰もが旅行に出かけるようになったからだ。
こうした鉄道の普及前にグランド・ツアーからの変容としては、ピクチャレスクとペデストリアン・ツアーがある。
ピクチャレスクといった概念で、風景は絵画の比喩として語られるようになる。すなわち、見ただけで古典的造詣を即座に理解できること、深い文学的教養と知的霊感が求められる。面白いのが階級社会を映すのもピクチャレスクということだ。乞食もピクチャレスクの一部なのである。なぜなら、廃墟にふさわしい人物としては乞食がもっともピクチャレスクな点景であるからだ。
人々を旅に駆り立てた要因としては、旅行記がある。本書では様々な作家の旅行記についての記述があり、最初は教養が必要だったのが、次第に自然を愛でる感性の旅へと変貌が見てとれる。
田園への愛情を育んできた雑誌として、「カントリー・ライフ」の記述があり、雑誌が提示する田園のイメージが、イデオロギーの壁をも問わず受け入れられた事実、戦争時は愛国心を発揮するプロパガンダとして機能したというのは興味深い。
十八世紀からのイギリス文化を旅と田園の変容をテーマにした本書、イギリス文化に興味がある方にはおすすめの1冊です。
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