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失われた芸術作品の記憶
「失われた芸術作品」と言っても、失われた理由は様々だ。窃盗・戦争・事故・天災や偶像破壊など様々な理由をテーマに失われた芸術作品を取り上げることで、生き延びた作品をより大切にすることにもつながる。
失われたことにより、芸術作品への扱い方が変わることもあるだろう。例えば、窃盗に関しては、1969年カラヴァジオの「キリストの降誕」が盗まれたことで、美術犯罪に特化した初の警察部隊が創設され、捜査方法が劇的に変わった。
洪水などの災難によっても保存と修復の技術が新たに開発される事例がある。洪水での経験を活かし、写本を保存する技術や、壁からフレスコ画を剥がすための技術が新たに開発されたのだ。こうした天災を機に、その場から動かすことのできない場合もある芸術作品をいかに救済するかという問題に向き合うことになるのだ。
本書は、失われた理由のテーマごとの章立てになっており、最初にひとつの作品の事例が語られてから、他の作品の例を見ていき、最後に最初に紹介した作品に戻る構成となっている。この構成の紹介で、第2章「戦争」がよかった。
1860年第2次アヘン戦争の時期で、舞台は北京の円明園だ。そこにある中国の十二支を象ったブロンズの首像がフランス軍に略奪されて失われた事例からはじまる。その後の事例でも戦争での略奪行為で芸術作品が傷ついたり、破壊されたり、はたまた復元され蘇る例が続く。
円明園の十二支の獣首像はどうか。この芸術作品に関しては、2009年にイヴ・サン・ローランの財産としてこの作品がオークションにかけられる。中国の文化遺産回復財団は買い受けを持ちかけられたが、工学な金額を提示されたという。最終的には2013年に、オークションのオーナーが善意で獣首像を購入し中国に贈呈したことにより、失われた芸術作品が戻ってきたのだ。残り5体は今だ失われたままだが、このようにして元の場所に芸術作品が戻る例があるのを知り驚くばかりだ。
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