ヒルマ・アフ・クリント 色彩のスピリチュアリティ

ヒルマ・アフ・クリント 色彩のスピリチュアリティ

著者
港千尋
発売日
2025年3月16日

ヒルマ・アフ・クリントの評伝。
アフ・クリントの家族関係や仲間の女性たちとの交流、作品から読み解ける神秘的な図像についての考察など、アフ・クリントを知る入門書としておすすめ。

現代では考えづらいですが、十九世紀にはスピリチュアリズムが興隆していた。その中には現実主義として考えそうな科学者たちもいた。スピリチュアリズムの興隆は、キリスト教という制度宗教の権威の相対的低下の影響もあるという。中・上流社会での交霊会への参加は特異ではなかったことに驚きだ。

ヒルマ・アフ・クリントはひとりでこのような作品を描いたのではない。女性5人からなる「De Fem」なる会で、夜に交霊会を行っていた。光景を描くのはハイ・マスターであり、ヒルマは色を塗るだけなのだ。

この頃の特徴としては、「自動書紀」がある。
自動書紀と聞いてシュルレアリスムを思い浮かべるだろう。だが、シュルレアリストたちによる自動書紀は、意識的なコントロールから解放されるために採用されている。一方、5人の場合は、高次の存在との霊的交信が目的であり、シュルレアリストたちと同じ文脈で語ることはできない。

だが、この女性たちの集まりと、ドローイングという記録方法には一種の解放をもたらしたという。それは、アカデミックな表現からの解放だ。彼女たちにとって神秘主義の魅了は、宇宙と人間の姿は固定されているのではなくて、変化するという考え方にあったのだろう。それは女性たちの社会的な不平等をケアする共同体でもあったのだ。

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