UDデジタル教科書体開発物語「奇跡のフォント」を読んだので感想
この本の著者である高田裕美さんと UD デジタル教科書体については、以前 Youtube の SCIENCE CHANNEL(JST)での動画ニュースで紹介されていて知りました。
ちょうどフォントについてや、書体デザイナーについても興味があるので、この本を読んでみました。
文字を読むことに苦労している子どもたちがいる
ロービジョン(弱視)やディスレクシア(発達性読み書き障害)といった症状があることを知っていますか?私は、この本で初めて知り、教科書が読めない子どもたちがいることを知りました。フォントによっては、文字が重なってみえたり、ぼやけて見えたり、フォントの装飾が刺さるように感じる人がいる事実に驚きました。
そのような経緯を知り、著者は UD デジタル教科書体の開発を始めます。UD デジタル教科書体は、開発から 8 年を経てリリースされることになるのですが、その様々な経緯などを本書の中盤から書かれていきます。
フォント開発の大変さ
あたりまえですが日本語フォントは、欧文フォントと比べて、ひらがな・カタカナ・漢字などデザインする種類が多いです。「木偏」などの部首など共通する部分もありますが、ひとつ修正するだけでそこで使われているすべての文字も再検討する必要があります。
本書の最初では、著者の学生時代、新人時代から話がはじまります。新人時代にはまだコンピューター普及前でしたので、すべて手書きの時代です。フォント開発はすごく繊細で、例えば線が髪の毛一本の違いでもその差が熟練の職人には分かるとのことです。
また、「UD」と名がつくからには科学的なエビデンスに基づいて改良して開発することが大事です。どのように読みやすいかを検証するプロセスも書かれていました。
- どの文字をどの文字に間違えたかという混同(コンフュージョン)分析が大切
- 例えば「4」を「6」と間違えてしまうこと
- 読書のしやすさ(リーダビリティ)も検証する
書体についても勉強になる
まだ手書きでフォントを作成していた時代からコンピューターへの移行の話もあり、フォント作成の技術的な側面についても学ぶことができました。また、フォントの部位なども説明されているので、普段フォントに意識がない人でも読みやすいと思います。
私も教科書体といったものがあることを初めて知り、この書体がどう明朝体やゴシック体と異なるのかを知りました。
- 例えば「山」などは明朝体、ゴシック体では「ゲタ」があり 4 画に見えてしまう
- 運筆の違いにより教科書には適さない
既存の教科書体では書体の線が細く、ロービジョンの方には読みづらいです。なので、特別支援学校では、太さの均一なゴシック体を一文字ずつ楷書体の形状や画数になるようにホワイトペンで修正して子どもたちに教えていたことに驚きました。
そのような経緯で UD デジタル教科書体の必要性(文字が見えやすくて、正しい文字を認識できる)が出てきました。
ユニバーサルデザインの本質とは
途中にあるロービジョン研究の第一人者の大学教授のコラムが印象的でした。UD デジタル教科書体が文字が見やすい人が多いからという理由で、すべてこのフォントにすれば良いと考えるのは良くないとあります。人それぞれに見やすい書体や好きな書体があり個人差があるので、どんなに小さな意見も大切にすることがユニバーサルデザインを実現するためには必要だといいます。
選択できることこそが、ユニバーサルデザインの本質です。
「平等な社会」ではなく「公平な社会」を実現するためにと著者は最後に書いています。
- 全員に同じ配慮をする平等ではなく、一人ひとりに合わせた配慮の公平な社会にすること。
- 自分に合ったやり方で学べる選択肢を整えることが「社会が作ってしまっている障害」をなくすことになる。
まとめ
普段誰もが目にするフォントは、開発者の情熱によって作られているのが、この本を読むと伝わってきました。フォントに興味がある人もない人もぜひ読んでみてほしい一冊です。