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四月の永い夢をみた

目次

何度目の鑑賞だろう。急に思い出し「四月の永い夢」をみたので感想。

概要#

3 年前に恋人を亡くした滝本初海。音楽教師を辞めた彼女の穏やかな日常は、亡くなった彼からの手紙をきっかけに動き出す。元教え子との遭遇、染物工場で働く青年からの思いがけない告白。そして、心の奥の小さな秘密。初海は喪失感から緩やかに解放され…。

世界が真っ白になる夢を見た。私はずっとその四月の中にいた

感想#

この映画が公開されたのは 2018 年だ。その当時、私は就活がうまくいかず実家の仙台に帰っていた。そこで 7 月にフォーラム仙台でこの映画を観た。この映画のことを思い出すと、その当時の記憶が蘇る。

2018年にフォーラム仙台で見た思い出
2018年にフォーラム仙台で見た思い出

この映画の描かれる時期は、7 月だ。そのことも、この映画をみなおしたいと思ったきっかけかもしれない。


物語はシンプルだ。3 年前に恋人を亡くした滝本初海の止まった時間、彼女の心が動き始める物語。教師を辞めてからは蕎麦屋のアルバイトをしている初海。店主の年齢により店を閉めてしまうので、職も探さなければいけない。ずっとこのままではいられない。

元教え子とカサブランカを上映している映画館での再開。教え子は、ジャズ・シンガーで映画ではなく音楽を聴きに来たという。この映画では音楽が重要になっていく。初海が好きな曲、赤い靴の「書を持ち僕は旅に出る」がこの映画のキーになる。

初海のことが気になり、アルバイト先の蕎麦屋でたまに会う染物工場で働く青年、志熊。花火大会の帰り道、お礼に飲み物を奢るといった時のジュースのチョイスに戸惑う初海役の朝倉あきの演技が良い。

花火大会の帰り道、赤い靴の曲をイヤホンで聞いてカメラが左から右へ横移動に映す。突然音楽が止まり無音になり、初海はこのままではいけないと我に返り立ち止まる。


後半部では亡き恋人の実家の富山へ電車で行く。そこで、恋人の母親へ亡くなる 4 ヶ月前には別れていたと誰にも言えなかったことを告白する。そこでの母親の言葉がこの映画のテーマだと思う。

でも本当は、人生って失っていくことなんじゃないかなって思うようになった

人生は何かを得ることじゃなくて、失うこと。失い続ける中で本当の自分自身を発見する。

母親は初海に、「息子と一緒の時間を過ごしてくれてありがとうございます。」と改まって言うのが印象的だ。

灰になる恋人の手紙。手紙は相手のことを思って書くべきだが結局は自分の言いたいことを書いていたと最後の手紙に書いてある。

自分のことは忘れて幸せになって欲しいという。だけど、初海は忘れて欲しいっていいながら、本当は忘れてほしくないことが透けて見えるのがずっと嫌いでしたと手紙に書く。

時間はずっとは止まってはくれず、季節は動き出す。誰にも言えなかった秘密を告白して、何かを失いながら少しずつ前に進んでいくのだろう。

映画のラストは帰り道、電車の遅延で偶然訪れた店のラジオから、告白を失敗した志熊から謝りたい、このラジオを聞いていたらとリスナー便りを耳にする。志熊がリクエストした曲は、初海が好きな曲、赤い靴で書を持ち僕は旅に出るが流れ初海は笑いそのままエンディングになる。


なんて静かな映画なんだろう。詩情に溢れる映像美だ。ロケ地の国立市の町並みが好き。
銭湯とか良いよな。

初海が、音楽教師を辞め、3 年間蕎麦屋でアルバイトをしていた部分に、当時の自分は共感したのだろう。初海とは違い、ジャズシンガーの元教え子や、染物工場で働く志熊は時間が止まっておらず、初海との対比で見せた表情などもすばらしいと思った。

鑑賞メモ#

  • 映画の街の舞台は、東京都のほぼ真ん中に位置し、東京駅から中央線で 45 分の国立市。
    • いつか映画のロケ地にも行ってみたい。
  • 映画で印象的な桜と菜の花の光景のロケ地は埼玉県北本市の西端、荒川に沿って南北に伸びる城ヶ谷堤(じょうがやつつみ)
  • 夏が舞台の映画。
  • 花火大会を町内の人で集まって見るのが羨ましい

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