「観音像とは何か 平和モニュメントの近・現代 - 君島彩子」を読んだ感想

「観音像とは何か 平和モニュメントの近・現代 - 君島彩子」を読んだ感想

目次

以前、宇都宮美術館の企画展のライシテからみるフランス美術のシンポジウムに行った際に、講演者の君島彩子先生の著書が気になっていたので、読んでみました。

また自分は出身が仙台なのですが、小学校の時に「仙台大観音」が校舎から見える位置にあったこともあり、なぜ巨大な観音像が誕生したのかや、観音像そのものについての興味もありました。

ふだん、仏教や歴史にあまり触れる機会がないため、個人的に久しぶりに関連書籍なども含めて知的好奇心が刺激される本でしたので紹介してみたいと思います。

どんな内容か?#

企画展の講演では、ライシテと絡めたお話だったので仏教などの観音像の宗教美術の公共性と宗教分離についての話をメインにお話されていました。本書では副題にあるように、信仰・礼拝の対象であった観音像が、戦後に仏像の域を超え、平和を象徴するモニュメントへと変容していく観音像の歴史を通史的に描いており、その独自性を評しています。

また、時代を経て巨大化する観音像が建立されますが、この観光施設としての意味が強い大観音像を存続させるために「平和」のイメージがどのような役割を果たしているのかについても分析しています。

気になったトピック#

知らない知識や関心事が多く、全ページ読書メモを取るくらいに濃い内容でしたが、特に気になった内容をいくつか紹介します。

プロパガンダとしての観音像#

西洋からの美術概念が導入された近代以降、仏像を視覚的に鑑賞することが重視されるようになり、仏像は視覚芸術である彫刻として認識されるようになりました。大正期には、寓意的な意味を込めた名称の仏像風彫刻が多かったのですが、戦時期になると従来の仏像の名称が復活し、仏像の宗教的意味が強調されるようになりました。

アジアにおける日本支配を正当化する大東亜共栄圏のシンボルにもなり、「興亜観音」が誕生されます。

また、怨親平等の思想もあります。これは敵も味方も区別せずに平等に供養するという思想ですが、実際に供養の対象になったのはアジアの人々のみでありました。この背景も大東亜共栄圏の思想が予想されます。要は日中友好のプロパガンダですね。

プロパガンダとして使われるものとして、絵画や映画などが挙げられますが、観音にもプロパガンダの一翼になるなんてことがあるのかと驚きました。たしかに信仰の対象として結びつきやすですね。

巨大観音像の存続に不可欠なもの#

巨大な仏像を扱った写真集やルポルタージュがあるように、巨大な観音像には信仰対象や美術作品としてだけでなく、観光資源や娯楽の対象として仏像を扱っていることもあります。そこには戦後の戦争死者慰霊のモニュメントからバブル期の観光施設への変容があります。

その変容の中にも、戦争死者慰霊や原爆などを観光施設として大観音像を建立させることに対する反対意見もあり完成することがなかった大観音像もあります。ほかにも自然環境破壊につながる危惧からの反対運動もあったようです。

また、大観音像を維持するにも莫大な資金が必要になります。そのため、税制面で優遇される宗教法人の形態をとることが多いみたいです。

平和のイメージとして定着した白色で女性的な大観音像は、宗教施設として信仰の場として機能しているので、戦争の記憶が薄れた時代においても、観光施設としての大観音像の存続に不可欠なものになっていることがわかります。

誰もが祈ることができる像とは#

怨親平等の思想といっても、戦時中ではアジアの人々のみが慰霊の対象になっていましたが、敗戦とともに状況は大きく変化し、戦後は平和を願う信仰対象として定着し、連合国側の戦争死者慰霊も行われるようになりました。

連合軍には仏教徒が少ない国も多いため、仏教の尊格である観音像では、仏教徒以外の敵も慰霊するには不十分であると考えられます。このため、観音像にキリスト教などの異なる象徴性を与えることで、すべての戦争死者の慰霊が願われました。

さらに、観音像を仏教にとらわれない「超宗教的な存在」であると捉えることで怨親平等の慰霊を願った人々もいたようです。

観音を聖母マリアのイメージと重ね合わせるマリア観音や、十字架の光背の観音像がありますが、それでも仏教やキリスト教徒以外の人々の慰霊には不十分です。そのことからも、誰もが祈ることができる像を目指したとき、従来の宗教イメージを用いることの難しさがあるのだなと感じました。

まとめ#

個人的に最近、公共の空間に設置してあるパブリックアートに興味があるのですが、同じく野外に設置してある観音像について、その歴史や何を象徴しているのかを本書を通して知ることができてよかったです。

テーマに沿った観音像が紹介されているので、他の視点での観音像についても知りたいと思いました。

また自分が行ける範囲の観音像だと、大谷の平和観音と高崎白衣大観音、相馬市の百尺観音があるので、実際に訪れてみたいと思いました。

気になる関連書籍など#

ここでは、本書を読んで気になる関連書籍や事項を備忘録として残しておきます。

  • 平和の象徴とされる折り鶴

    • 佐々木禎子
  • 観音像以外の平和を象徴するモニュメント

  • 東京美術学校の開校

    • 岡倉天心について詳しく知りたい
  • 興亜観音の発願者、松井石根について

  • 大阪万博に建立された観音像
  • 椎尾弁匡による共生運動
  • 山﨑良順について
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在りし日の印刷現場レポ「印刷に恋して - 松田 哲夫」を読んだ感想
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直近に「タイポグラフィ・ブギー・バック」という本を読んだが、その本では写植からデジタルフォントの時代の変遷を著者の体験から描いたエッセイだった。そこでは本や漫画を読むときに活字のフォントによっての印象の違いが大きいことが述べられていた。

<AmazonLink imageId="61A4CMZGhpL.SY522" linkId="4xuuZIe" title="タイポグラフィ・ブギー・バック: ぼくらの書体クロニクル" author="正木 香子" />

・読書感想 タイポグラフィ・ブギー・バック: ぼくらの書体クロニクル

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公開日:2026-09-19
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#書籍紹介
ヒルマ・アフ・クリントの絵画が表紙になっている書籍をまとめてみました
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はじめに

画家が描いた絵画が、書籍の表紙デザインに使われることはよくあります。例えば、アンリ・マティスの「イカロス」は書籍の表紙に何冊か使われていますね。

https://togetter.com/li/2677752

最近では、ヒルマ・アフ・クリントの絵画が表紙になっている書籍をいくつか見かけるようになりました。そこで、ヒルマ・アフ・クリントの絵画が表紙になっている書籍をまとめてみます。

祭壇画、グループX No.1

3点から構成される「祭壇画」のNo.1にあたる作品になります。スペクトラムの色調の三角形、太陽を模した光り輝く金属箔が神秘的な作品になります。

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公開日:2026-06-15
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#書籍紹介
#画家
「「盛り」の誕生 女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識 - 久保 友香」を読んだ感想
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女の子たちがプリクラやアプリなどで、目を大きく加工した写真などを見たことがある人は多いかと思います。

本書では、この「盛り」を「一九九〇年代半ば以降のデジタルテクノロジーの発展により出現した「バーチャル空間」において、日本の女の子の間に広がった、ビジュアルコミュニケーションの行動。」と定義し、この「盛り」が生まれた背景を1990年代の渋谷から生まれたコミュニティから当事者へのインタビューを通して分析しています。

外国から日本の女の子たちに注目が集まる

ある日著者のもとに、フランス本社の化粧会社マーケティング部長の方が訪れる。その方は著者の「なぜ日本の女の子たちはそっくりな顔をしているように見えるか?」という記事を読み興味を持ったという。

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公開日:2026-05-09
更新日:2026-09-16
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#書籍紹介
セルフマーケティングと継続力の鬼 「SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル 第2版」の感想
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どなたかは忘れましたが、自分が技術ブログを作っていた時に、いろいろ他の人の技術ブログを見ていて、この本キッカケで技術ブログを作成したという人がいて、ずっと気になってた本をようやく読めたので感想を書きます。

どんな本か

書籍のタイトルにあるように、ソフトウェア開発者向けの本ではあるのですが、不動産投資などの資産形成の話や健康の話なども書かれています。

この本は、いいソフトウェア開発者になるための方法を教えてくれる本でもあり、キャリアのマネジメント、目標の達成、人生の楽しみ方について書かれています。ソフトウェアについての本なのに、人生の楽しみ方についても触れられているのは、著者のジョン・ソンメズさんが、33歳で早期引退(FIRE)したことにも影響しています。

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公開日:2026-03-30
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#書籍紹介
UDデジタル教科書体開発物語「奇跡のフォント」を読んだので感想
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この本の著者である高田裕美さんと UD デジタル教科書体については、以前 Youtube の SCIENCE CHANNEL(JST)での動画ニュースで紹介されていて知りました。

<Youtube videoId="1JcXa2u7kX0" />

ちょうどフォントについてや、書体デザイナーについても興味があるので、この本を読んでみました。

文字を読むことに苦労している子どもたちがいる

ロービジョン(弱視)やディスレクシア(発達性読み書き障害)といった症状があることを知っていますか?私は、この本で初めて知り、教科書が読めない子どもたちがいることを知りました。フォントによっては、文字が重なってみえたり、ぼやけて見えたり、フォントの装飾が刺さるように感じる人がいる事実に驚きました。

そのような経緯を知り、著者は UD デジタル教科書体の開発を始めます。UD デジタル教科書体は、開発から 8 年を経てリリースされることになるのですが、その様々な経緯などを本書の中盤から書かれていきます。

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公開日:2026-01-21
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#書籍紹介
#フォント
「TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる」を読んだので紹介
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Zettelkasten(ツェッテルカステン)について学びたかったので、TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになるを読んだ感想です。

<AmazonLink imageId="71taKZfhhWL.SY522" linkId="4o8lfyX" title="TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる" author="ズンク・アーレンス" />

読んだ経緯

以前、クリエイティブプログラマーという本を読んだ時に、Zettelkasten という手法を編み出したニクラス・ルーマンのことを知りました。

Amazon商品情報から引用

<AmazonLink imageId="81nmtchuZoL.SY522" linkId="450JeHq" title="クリエイティブプログラマー" author="Wouter Groeneveld" />

この本をきっかけに、ニクラス・ルーマンや Zettelkasten の手法について知りたいと思い、日本語で Zettelkasten について唯一紹介されている本書を読みました。

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公開日:2025-08-02
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#書籍紹介
#メモ術
小説版 機動戦士ガンダムを再読した
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2025 年は、機動戦士 Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)が放映された年でした。自分は途中からのリアルタイム視聴ができ、いろいろ不満がありながらも面白く一気見しました。

ちょうど 4 年前に「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」を劇場で観て、ガンダム熱が再熱してしまってファーストガンダムから V カンダム、F91 までの小説版を購入して読んだので、今回もまた GQuuuuuuX を見たきっかけで小説版を再読しようと思いました!

4 年前のガンダム熱が再熱したツィート...

<Twitter url="https://x.com/kameno_no3/status/1421415599486365697" />

小説版 機動戦士ガンダムについて

初代ガンダムを小説化したシリーズで、全 3 巻が発売されています。角川スニーカー文庫版を読みました。

<AmazonLink imageId="81GrNu1kooL.SY522" linkId="4o6HLIz" title="機動戦士ガンダム〈1〉 (角川文庫―スニーカー文庫)" author="富野 由悠季" />

小説版のガンダムは、アニメシリーズとは全然別物になっています。具体的には、ララァが第 1 巻の後半で登場するが、あっというまに退場したり、その後に小説オリジナルのニュータイプとして「クスコ・アル」なるキャラが登場したりします。

また、GQuuuuuuX の重要人物のシャリア・ブルはアニメ版では 1 話だけの登場でしたが、小説版では登場回数は多いです。

モビルスーツに関しても、第 1 巻でアムロが乗るガンダムが大破し、マグネットコーティングが施された G-3 ガンダムが登場します。シャアが乗るモビルスーツも、ジオングもゲルググも登場せずにシャア専用リック・ドムが登場します。

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公開日:2025-07-27
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#書籍紹介
#小説
#ガンダム
フォントのふしぎを読んだので紹介
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フォントのふしぎを読んだので紹介

フォントやタイポグラフィについて勉強したいと思い、フォント関連の本を読んでいきたいと思います。 手始めに読んだ「フォントのふしぎ」が良かったので紹介します。

<AmazonLink imageId="51Dtxr9LBSL" linkId="4nIcZFK" title="フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?" author="小林章" />

書籍と著者について

この書籍は 2011 年に出版された本です。著者は「小林章」さんで、ドイツ在住の欧文フォントの書体デザイナーです。他にも欧文書体などの本も書かれております。

海外に在住している書体デザイナーの著者が、街角で見つけたロゴや看板などの文字に関して写真を載せ、それをもとにフォントの話を展開していくという構成になっています。

カラーで写真も豊富に載っているので、見ていてとても楽しいです。

誰でも読みやすい、親しみやすい語り口

この本の魅力のひとつが、タイポグラフィの専門書でありながら、とても親しみやすい口調で書かれていることです。

たとえば、こんな一文があります。

「いっぽうで、1 とアイがまったく同じようなデザインのフォントもある(183 ページ)。別にどっちがイイとか悪いとかじゃないんで。」

こんなふうに、小難しい話をわかりやすく、時にはちょっと笑えるような軽やかさで解説してくれるので、まるで話のうまい先生の授業を聞いているような気分になります。

また、ヨーロッパで撮影された実際の看板や街中の文字を写したスナップ写真も豊富に掲載されていて、「フォントが使われている現場」の臨場感をリアルに感じられるのも大きな魅力です。そこにはきちんとフォント名とメーカー名も添えられているので、実用的な知識としても役立ちます。

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公開日:2025-05-09
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#書籍紹介
#フォント
読んだ本リスト
炎の中の図書館 110万冊を焼いた大火
炎の中の図書館 110万冊を焼いた大火
炎の中の図書館 110万冊を焼いた大火
人文・思想・社会
著者
スーザン・オーリアン
発売日
2019年11月18日

1986年にアメリカ史上最悪の図書館火災があった。その場所は、ロサンゼルス中央図書館である。放火犯として疑われた青年は、俳優志望で虚言癖のある男である。彼の供述は二転三転するが、証拠不十分で刑事告発は見送られるし、火事から7年後に亡くなってしまうので、この火事の真相は分からずじまいである。

真相が分からない事件なので、書くことも少ないのであろう。ページ数が多いが、残りはこの図書館の歴史や、歴代の図書館司書などが短い章で書かれていて、非常に読みづらかった。

図書館そのものの話としては、公共性としての図書館の役割がアメリカと日本で違うのが印象的だった。ロサンゼルスではホームレスの人が多いらしい。図書館はその人たちにも無料で居場所を提供できる唯一の場所とのことだ。

燃えた後の本の扱いにも驚いた。なんと冷凍で保管するらしい。というのも濡れた本はカビが生えてしまうからだ。この冷凍庫の貸し出しに協力する企業の話も出てくる。町にとって図書館は大切な場所なのだろう。

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「炎の中の図書館 110万冊を焼いた大火」の参考文献一覧

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公開日:2026-10-07
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#人文・思想・社会
本屋、はじめました 増補版
本屋、はじめました 増補版
本屋、はじめました 増補版
本屋
著者
辻山 良雄
発売日
2020年1月9日

荻窪にある新刊書店「Title」の店主である辻山さんの著書です。
辻山さんは、Titleを開業する前にリブロという書店で働いていました。
前半ではリブロで働いていたなかで気づいたことを、後半ではなぜ新刊書店を開いたのかが語られます。

新刊書店を開く前に行う準備のことなどが、赤裸々に描かれており、新しく独立系の本屋を開きたい人に参考になる内容も多いかと思います。店の場所の選び方や、ロゴ、ブックカバーなどについての記載があります。

文庫版の増補では、単行本発行から五年が経過したその後のTitleのことが書かれています。売上や利益のことについても書かれてある。

印象的だったのが、人とのつながりのことだ。
小さなお店をやることは地域の人びととの結びつけが大切なのだろう。

新たに本屋をやりたい人も、小商いを始めたい人も、本屋のことが好きな人も参考になる1冊だと思います。

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公開日:2026-10-06
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#本屋
本棚の歴史
本棚の歴史
本棚の歴史
人文・思想・社会
著者
ヘンリー ペトロスキー
発売日
2003年12月31日

意外になかった本棚そのものの歴史に着目した本書。
著者は「フォークの歯はなぜ四本になったか」の著者で知られるペドロスキーです。

昔は今のような形態の本ではなく、古代では巻物の形であり、そこから冊子へと進化。そこから活版印刷の誕生と続く。ここで重要なのは、本と本棚が別々に進化するのではなく、本の形態が進化したら、それにともなって本棚の方も進化していくことだ。

本の保管の歴史は、巻物の時代は、ケースや箱に置かれていたり、冊子になると、戸棚や保管箱に進化する。写本文化が栄えると、書き取りしやすいように斜面をなす書見台が登場した。次第に蔵書の数が増加すると、ストール・システムが導入され、今見るような本の縦置きが始まることとなる。

ここで面白かったのは、昔の本の背には題名や著者名がなかったことだ。蔵書もまだ少ないころは、判別ができていたのだろう。また、本の背に何も書かれていないので、収納する時には背を奥にし、前小口を外側に向けて収納されていたらしい。

また、同時写本は貴重品だったので、本が盗まれたりしないように、鎖で書見台につながれていた。その前には鍵を使用されていたらしいが、複数ある鍵のタイプだったので、その煩わしさをなくすために鎖が使われたのだという。

本が鎖につながれていたことは、本棚の形態意外にも、建造物にも影響を及ぼすことになった。昔は電気もなく日の光がないと読めないことと、鎖につながれた本という事実が、イギリスでは歴史的な図書館の構造と発展を一七世紀末まで左右し続けたのだという。

このように本書では、本棚について語るために、本の歴史や保管する図書館についても語っている。後半では図書館の話が多くなってしまっていて、本棚ではあるが、期待していたものとは違うかなと感じた。もう少し個人の蔵書や本棚について読みたかったかも。

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「本棚の歴史」の参考文献一覧

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公開日:2026-10-03
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#人文・思想・社会
燃える平原
燃える平原
燃える平原
小説
著者
フアン・ルルフォ
発売日
2018年5月16日

燃える平原は17の物語からなる短編集である。
どの作品にも死が出てくる作品群を読んだことがない。
そこにまつわる復讐や親子関係、荒涼とした大地が作品を満たす。

作品の中で、気に入ったのは以下の3つ

  • コマドレス坂
  • タルパ
  • 殺さねえでくれ

今回再読したわけだが、どの作品も素晴らしい出来であったのに気づいた。
現在、岩波文庫版は絶版になっているが、見つけたら手にしてもらいたい。

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公開日:2026-09-26
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#小説
偶然の装丁家
偶然の装丁家
偶然の装丁家
デザイン
著者
矢萩多聞
発売日
2014年5月1日

「就職しないで生きるには21」
装丁家である矢萩多聞さんの著書になります。

「偶然の装丁家」とあるように、矢萩さんが装丁家として本をつくる仕事をするようになったのは、さまざまな縁があったからです。

本の前半では、矢萩さんの学生時代が語られます。不登校であった小学生時代。5年生でよい先生に出会い学校に通い出す思い出。だが中学校ではまた不登校に戻って学校に行かなくなってしまいます。

矢萩さんの父親もモノづくりの人で、木版画家であります。父親の影響から、はじめての海外はネパールに行き、そしてインドで暮らすことになります。

印象に残ったのは「その場にアジャストする」ことです。インドでは日本ほど生活がしやすくないで、でこぼこの国です。社会そのものがまっすぐな水平の上に建ってないから、人間のほうがアジャストする必要があるとの言葉になるほどなと思います。

本の後半では、いまの仕事である「本をつくる仕事」にフォーカスします。矢萩さんのはじめて出た本は、春風社という出版社から出た対談本になります。ここで矢萩さんは、はじめての装丁をすることになり、そこから今につながっています。

矢萩さんは個展などで絵を売ってたりもしましたが、装丁家を名乗るきっかけになったのが、安原顕さんとの仕事からだそうです。安原顕さんの最後の著書の装丁を手掛けたことで、著者にとってはどの本もかけがえない一冊で、最初で最後になる本かもしれないと思いました。小遣い稼ぎでやってしまったらまずいと、自分の仕事の重大さに気づいたそうです。


装丁家の人の本を読んだのがはじめてなのもあり、勘違いしていたことがありました。装丁家とは本の表紙だけをデザインするのではないそうです。

矢萩さんの「一冊の本ができるまで」は次のようになります。

  • 何はなくとも、まずは打ち合わせ
  • ラフづくりは果てしない
  • 修正するもの、しないもの
  • 紙選びと印刷

本のデザインをするためには、著者と編集者との打ち合わせが大切なことが伝わってきました。会話のなかから産まれてくるものがあるのです。

矢萩さんの人柄を表すエピソードで好きだったのが、ある会社の都合でデザイン料を安くしてくれと言われたときのことです。最初は腹がたったのですが、こう提案したのです。

「わかりました。きっとあなたも会社に言われて、融通をつけることができないんでしょう。デザイン料は改定後のものでけっこうです。ただし、その分、また仕事をください!」

なかなかこういう風に提案はできないなと関心しました。損をして得とる、抜け目ないインド人的発想かもしれないと著者は自己分析しています。

デザイン料に対してもそうです。装丁家はいくら本が売れたとしても、デザイン料は一定です。それに対し、装丁家にも印税制にすべきだ、と主張する人もいますが、矢萩さんは違います。

もし印税制になったら「たくさん売れる本をつくる」ことが目的になってしまい、おかしくなってしまいます。それよりも、装丁した本が有名になることで、新しい仕事につながることの方が良いといいます。このことを「目に見えない印税」と表現していて良いなと思いました。

このシリーズは「就職しないで生きるには」となっていますが、矢萩さんはあとがきで、就職しないで生きてほしい、とは思わないと書かれます。仕事を通じての人との出会いや繋がりのなかで、身の丈にあった「居場所」を見つけること。そんなことを読んで思いました。

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公開日:2026-09-30
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#デザイン
統計でウソをつく法
統計でウソをつく法
統計でウソをつく法
統計
著者
ダレル・ハフ
発売日
1968年7月23日

本書は50年以上前に出版されており、いまでも重版され、長いこと読み続けられている統計学のおもしろ本である。アメリカで1954年に発行となるので、事例が古いし、訳が読みにくいのが難点か。いまなら別の統計学の本を読んだほうがいいのかもしれない。

平均でだましたり、グラフをいじって誤用させる事例などは、今でも行われており、SNSでも取り上げられるので知っている内容は多かった。

本書が発行される前は、こうした統計でだます手法は本でしか知る由もなかったろうから、インターネットがない時代に生まれてなくてよかったと感じたかな。昔はだまされる人が多かっただろうと想像する。

最後の第10章「統計のウソを見破る五つのカギ」と題して、1~9章で紹介してきた統計のウソを見破るための方法が5つまとめられる。

  • 誰がそういっているのか?(統計の出所に注意)
  • どういう方法でわかったのか?(調査方法に注意)
  • 足りないデータはないか?(隠されている資料に注意)
  • いっていることが違ってやしないか?(問題のすりかえに注意)
  • 意味があるかしら(どこかおかしくないか?)

統計のウソを見破るためには、高度な数学など必要ないのだ。しっかりとした科学的な考え方や、ロジカルな考え方が必要なのである。

それはいつの時代でも同じであり、普遍的な内容なので、重版を重ねて読み続けられているのであろう。

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公開日:2026-09-28
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#統計
雑学者の夢 (グーテンベルクの森)
雑学者の夢 (グーテンベルクの森)
雑学者の夢 (グーテンベルクの森)
人文・思想・社会
著者
多木 浩二
発売日
2004年4月20日

ベンヤミンに倣っていえば、私は、自分について書かないことで自分の文体を作ってきた

本書では読書体験を書くという前提があるから、ある程度、著者自身のことも書くことになる。一般的な読書遍歴といった形ではないため、どのように読んだらいいかが難しかった。

多木さんの仕事は幅広いが、自身のことを美術史家とか、建築評論家とか、写真評論家とかの、なんらかの肩書きで示すことはできないと云う。専門家にならなかったのは、好奇心があらゆるものに拡がっていったからという部分に僭越ながら共感を得る。

沢山の本を読まれてるだろうが、博識な著者でも読んだ本について、忘れていることも多いと書かれているのは安心できる。

書物とは物体ではない。生きている人間の経験のなかで変質もし、消滅もするテクストなのである。再読することは、埋もれた記憶を掘り起こす行為である。かつて読んだ書物の内容を思い出すのではない。忘却のあいだに経験した世界によって、変形された記憶として想起することなのである。

ロラン・バルト、ソシュール、バンヴェニスト、ベンヤミン、フーコーと辿る読書遍歴の歴史。ある種の知識人である著者の読書の軌跡を見せてもらえる。多木さんの著書はまだ読んだことがないので、これから読んでみたいと感じた。

関連サイト(外部サイト)
「雑学者の夢 (グーテンベルクの森)」の参考文献一覧

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公開日:2026-09-26
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#人文・思想・社会
「感想文」から「文学批評」へ: 高校・大学から始める批評入門
「感想文」から「文学批評」へ: 高校・大学から始める批評入門
「感想文」から「文学批評」へ: 高校・大学から始める批評入門
批評
著者
小林真大
発売日
2021年2月25日

このブログから読者感想文を書くようになったが、ありきたりなことしか書けなかいことが課題だったので本書を読んだ。タイトルからハウツー本だと思ったが、ロマーン・ヤーコブソンが提唱している文学批評の六つの型を丁寧に解説している入門書だった。

ロマーン・ヤーコブソンの文学批評の六つの型は以下のようになる。

  • 作家論(作者重視)
  • ニュークリティシズム(メッセージ重視)
  • 読者論(読者重視)
  • 構造主義(コード重視)
  • イデオロギー批評(コンテクスト重視)
  • メディア・スタディーズ(接触重視)

文学批評のタイプは、「作品の真の意味がどこにあるのか」という問いに対して、どの角度から論じるのかによって分類できるという。なのでタイプによっては、限界や批判がある。その歴史的経緯などを本書では丁寧に説明してくれるので、文学批評の入門書として最初に手にとってよかった。

こうした事例を通じて、文学作品の評価は、社会の変化とともに変わり続けることが理解できる。批評家によって作品の価値を、批評を通じて人々に伝えることができる。批評家が社会に及ぼす影響を忘れないようにし、批評をはじめる前に、必ず覚えておかないと終章で締める。

自分はどのタイプで文章を書いていこうか。幸いにも文学批評の概観を本書で知れたし、参考文献も豊富なので、その他の本も読んで良い文章を書けるようになりたい。

関連サイト(外部サイト)
「「感想文」から「文学批評」へ: 高校・大学から始める批評入門」の参考文献一覧

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公開日:2026-09-26
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#批評
誤解学
誤解学
誤解学
人文・思想・社会
著者
西成 活裕
発売日
2014年5月22日

「渋滞学」で著名な西成活裕氏は、誤解のことをこう書く

誤解とは、コミュニケーションの流れにおける渋滞のようなものである。誤解はそれまでの流れの様子を一気に変化させ、関係者にとって好ましくない状態を作り出してしまう

そもそも誤解が発生してしまうメカニズムとは何であるのか。
第二章では誤解の理論を構築していく。

理論構築のためには因果関係を表すモデルを作成し分析する。このモデルをIMV分析と呼ぶ。それぞれ下記の頭文字をとったものだ。

  • Iはintension(真意・意図)
  • Mはmessage(情報)
  • Vはview(見解)

誤解は自分の意図と相手の見解のズレで発生する。つまりI ≠ Vのときだ。

その他にも、自分の意見がどれぐらい保持するのかを表す頑固度K、VとIがどれくらいズレるかという指標、ズレを表す伝達度Gの変数も分析には含まれる。

ここで数理モデルの面白さを感じたのは、頑固度Kと伝達度Gが一定で変化しない条件のときではあるが、二者のコミュニケーションの最終合意がどこに行きつくかがシミュレーションで予測できることだ。

この条件の元だと、先手有利の法則になり、最初に話しかけた方が有利になるとのことだ。
このようなことが理論的に示せるのが興味深いと思った。

もちろん実際には、変数である頑固度や伝達度は会話のやり取りで変化するので、より複雑になるであろう。このことも本書で書かれていたらよかったが、残念ながら本書ではカバーしきれていない。

複雑さまで書かれていないのが不満ではあったが、数理モデルの面白さを知る上での良い入門書ではあるだろう。

関連サイト(外部サイト)
「誤解学」の参考文献一覧

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公開日:2026-09-22
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#人文・思想・社会
本屋という仕事
本屋という仕事
本屋という仕事
本屋
著者
三砂 慶明
発売日
2022年6月14日

日本全国各地の書店員たちが、本について、本屋という仕事についての語る。

ただ本が好きだから売るのではなく、本屋として商売としてどう成り立たせるのか様々な思いが綴られている。

また、ある書店員さんは、本屋の「棚づくり」について語られており、本屋さんの思いがあらわれる場所なのだと感じた。

紙の本が好きだし、本屋という場所が好きなので、これからも微力ながら応援したい場所だ。

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公開日:2026-09-22
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#本屋
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