【月報】2026/05 幾何学風景 モダンガール
目次
美術館
森光子展 幾何学風景 ― 足利美術館

五角形や三角形などの幾何学的な形と鮮やかな色彩の組み合わせの作品が多く、とても参考になった。二次元のキャンバス上に描かれた作品だけでなく、立体物やネオン管での作品もあった。立体物では、影が出来る箇所に意図的に濃い色が塗られているのが、実際に近くで観て分かり面白かった。
美術館に行くといつも感じることですが、同じテーマで作品を作り続けるアーティストのすごさを感じる。自分は、興味があることがたくさんあり目移りしてしまうので、そろそろテーマを決めて向き合わなくてはいけないと思う。
まずは、自分も黄金比について探求してみて、模倣でもいいから幾何学的な作品を作り始めようと思った。
中原淳一展 - 栃木市立美術館

中原淳一の描く少女・女性は、ファッションも相まってすごくかわいくモダンだ。どうして大正・昭和の雑誌にこんなに惹かれるのだろう。雑誌や著作本の表紙原画や、雑誌の中身として、ファッションを装う楽しさを伝えるページなどが展示してあった。
また、フォントもすごく特徴的だなと思った。中原の「原」の字などが独特だ。グラデーションのカラーがかかったフォントも、見たことがない表現で参考になる。
栃木市立美術館の隣には文学館があり、栃木ゆかりの作家として吉屋信子の展示もある。「花物語」の挿絵を中原淳一が担当していることもあり、吉屋信子の作品も読んでみたいと思った。
ゴッホの跳ね橋と印象派の画家たち - 宇都宮美術館

ドイツ有数の美術館、ヴァルラフ=リヒャルツ美術館・コルブー財団のコレクション所蔵からなる印象派の画家たちを中心とした展覧会でした。自分は、印象派の画家たちというよりは点描画の画法を用いた作品が好きなので、点描画の作品が多く展示されていてよかったです。特に印象に残ったのは、レオ・ゴーソンの「ラニー=シェル=マルヌのエテューヴ通り」です、絵画の外側の額縁まで点描画になってる作品は初めてみました。
また、ルノワールの織物をした可愛らしい子どもの作品が展示されてるのですが、モデルが息子のジャン・ルノワールであったことに驚きました。多数の印象派の画家たちの作品があるなかで、ルノワールの作品を間近で見ると言語化できない違いを感じることができ、やはりルノワールは好きだなとあらためて思いました。
余談でポスターなどなんですが、宇都宮会場のみタイポグラフィが斜めの切り取りになっている意図は何なんだろう。その点に注目して鑑賞してみたけど、よく分からなかった。「2026」の「6」で下半分が切り取られているのよくOKが出たなと思った。ぶっちゃけ、視認性がキツくない?
本
魔法少女はなぜ変身するのか ポップカルチャーのなかの宗教
副題をタイトルにしたほうがいいのでは?
タイトルから連想される内容とは違い、本書はアニメやマンガなどのポップカルチャーを研究することで、現代日本の宗教状況を理解するために書かれた本になります。
本書は3章からなり、「魔法少女」「巫女・神社」「異界・転生」を扱っている。アニメやマンガの学術分析は、ジェンダーからや民俗学など多様にあるが、宗教にどのような影響を与えるかについての研究は少ないという指摘は知らなかった。もっと宗教と絡めた論考があるのかと思っていた。また、「魔法少女」にかんする論考でも、「魔法」そのものに関する記述は少ないらしい。
正直、印象に残る記述は引用部分に多かったという読後なので、ポップカルチャーに関するブックガイド的な感じに読むといいのかもしれないと思った。
「盛り」の誕生 女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識
本書は、日本の女の子の「盛り」の文化が変化していった約二十五年間の歴史を当事者へのインタビューを通して考察していきます。「盛り」とは、コミュニティとの関係の中で行われるものであり、これは相対的なものであるとの指摘が面白いと思いました。
プリクラについての話では、プリクラの画像処理技術により、撮影して映えるために実際に見るとおかしいくらいの濃い化粧をしていたとの記述があります。別の話になりますが、中原淳一の展示の雑誌への原画でも、近くで見ると目のまわりや顔まわりに光源の表現として白が目立つように描かれており、似ている現象だなと思いました。
非常に面白い本であり、感想はこちらにも書いていますので、興味がある方はぜひ読んでみてください。
妄想の世界史 10の奇想天外な話
世界史となってるが、主に中世から近世のフランスやイギリスなどのヨーロッパの話で、10個の妄想に憑かれた人たちや、精神科医の話が書かれている。精神科医については、現代でその人の名前が付けられた「カプグラ症候群」「コタール症候群」「クレランボー症候群」などの第一症例の人たちが取り上げられる。
どの話にも妄想を発症した患者に対しては、親身に寄り添うことが大切だと説かれている。そもそも妄想に憑かれた原因が戦争や貧困などの精神的に辛い状況であることが多いからだろう。また、現代で考えると陰謀論を信じる人たちにもいえることだと思った。
翻訳者の全技術
タイトルに反して、翻訳者のための本ではない。著者は山形浩生だが、氏のよくわかりやすい翻訳の秘訣や、読書論を独特な山形節で書かれていて非常に面白い、
山形浩生みたいな文体?に少し憧れてしまう。ちゃんと自分自身で考えて出力されているからだ。氏の文章を読むと、こういったブログで本の内容だけを書くのはなるべく避けたいなと思う。
翻訳地獄へようこそ
こちらは、英米文学・ミステリを翻訳している翻訳家の雑誌に連載されていたのを、まとめた1冊。山形浩生氏の本だと翻訳は簡単な印象を持ったが、この本を読むとそんなに簡単なことではないのだなと思った。
様々な誤訳を元に、外国語の表現を日本語の表現に落とし込むことの難しさを知ることができた。「翻訳とは外国語の言葉を訳すだけの作業ではないのです」とあるがその通りですね。
渋滞学
世の中は渋滞だらけである。人混み、車、アリ、インターネットなど渋滞が起きるメカニズムを研究する「渋滞学」の学者である著者が分かりやすく解説している1冊。
渋滞研究では、セルオートマトン法による離散的な値でのモデルを使用してのシミュレーションをして検討しているのが面白い。この本は2006年刊行なので、最新の渋滞学はどうなっているのかが気になる。
関連書籍としては、アリに関しての本が読んでみたいと思った。
ダムと緑のダム 狂暴化する水災害に挑む流域マネジメント
地球温暖化の影響などから増加している、「複合型水災害(洪水・土砂災害・流木)」に対して、ダムや森林の役割や機能について、専門家が監修として書かれた本。
普段、ダムなど目にする機会がないので、あまり興味がなかったが、ダムの役割や機能について知ることができて面白かった。メリットがあるならば、増やせばいいのでは?と思ってしまうが、逆にダム建設の悪影響もあるようで、難しいなと思った。本書の結論としては、水を中心とした課題に対する流域の関係者全体に対象を広げた連携方策の流域マネジメントが必要であると説いている。森林とダムなど流域全体での連携・協働した取り組みが重要なのだ。
あしたの火山学: 地球のタイムスケールで考える
以前、福島にある磐梯山噴火記念館に行った時に、磐梯山の噴火の歴史や火山の仕組みについて知ることができ、火山について興味を持ちました。本書でも、磐梯山を初めとした日本の火山についての話や、古代都市ポンペイの話など、火山に関する様々な話が書かれています。
著者は個体地球物理学が専門です。メディアに出る地質学者とは見方が異なるようで、彼らの危険を煽るような言説に対して、火山を正しく恐れるべしと説いています。火山の噴火の予測は難しいとの記述もあり、過剰に恐れる必要はないが、正しく恐れることが大切なのだろうと思った。
初めて学ぶ 都市計画(第二版)
建築に興味があるので、周辺分野としての都市計画についての本を読んでみました。おそらく教科書で使われている本だと思いますが、入門として都市計画を全体的に知ることができてよかったです。直近で読んだ、ダムや火山にも関連する話もありました。
本書は、前半が基礎的な部分になっており、後半がフルカラーの事例が24個紹介されている構成になっています。事例は実際にまちあるきをするなら、どのコースを歩くのがいいのかが分かるような内容になっていて、実際に行って確認してみたいと思いました。
物価とは何か
経済学の知識がまったくない状態で読んだ。結論としては、最初の1冊としてこの本を読んでよかった。お恥ずかしながら、物価の性質が国によってや、国民性によって違うということを知らなかった。日本の経済事情はかなり特殊なものといったことが、統計データをもとに説明されている。
物価との共通点として、地震があげられており、直近で読んだ「あしたの火山学」でも出てきた大森房吉の地震と余震の研究の話も出てきた。大森房吉について興味が湧いたので、関連書籍を読んでみたい。
経済学についても勉強したいと思った。参考文献リストはWeb上で公開されているので、そこからいろいろと読んでみたいと思います。ちなみに著者のWebサイト上の参考文献のリンクは間違っていて、正しくはこちらですね。
映画
シェルタリング・スカイ
ラストタンゴ・イン・パリが名前を知らない男女がアパートの一室でセックスを続ければ愛は芽生えるかという話だが、シェルタリング・スカイは何年も一緒にいる倦怠期の夫婦が異国の砂漠の地に行けば、再び愛が芽生えるのかという話だろう。
ここで歪なのは、同行者の男との3人での旅ということだ。序盤の会話ででてくる観光客と旅人の違いのセリフが印象的だ。ツーリスト(観光客)は着いて帰ることばかり考える。トラベラー(旅人)は自由気ままだ。
映画の中盤で夫は病に倒れて亡くなる。それまで倦怠期であった妻の必死の看病。そこでは、誰も知り合いがいない土地でひとりぼっちになることの不安や恐れもあったのだろうか。しかし、2人の愛は戻ったようにみえる。
夫を亡くしてからのキットの喪失感の演技、目の落ちようのすごさ。映画は原作者であるポール・ボウルズのセリフで終わる。
自分の人生を左右したと思えるほどの大切な思い出を、人は何回心に浮かべるのか。4、5回思い出すのがせいぜいだ。あと何回満月を見られるのか。だが、人は無限の機会があると思っている。(ポール・ボウルズ)
リトル・ブッダ
本作では、2つの物語が交互するように描かれる。ひとつは、師ドルジェの生まれ変わりを探して、アメリカのシアトルにやってきたチベットの僧侶たちの物語。もうひとつは、ガウタマ・シッダールタ(ブッダ/釈迦)誕生の物語だ。
ちょうど輪廻転生について書かれた本(魔法少女はなぜ変身するのか)を読んだところだったので、興味深く鑑賞できた。キリスト教では輪廻転生といった概念がないので未知の思想だと思うが、当時の西洋人がこの映画を観て何を感じたのだろうかと気になった。
ひとりの魂が3人に分割することはあるのだろうか?それに国を超えて生まれ変わる事例はあるのだろうか?など、輪廻転生についての疑問もいくつか浮かんだ。
シャンドライの恋
1998年制作のベルナルド・ベルトルッチのこの映画は、どこかおかしい。映像編集を見ればところどころぶち切りされた編集やスローモーションがあり違和感が惹きつけられる。カメラワークだって斜めから撮ったシーンや、シャンドライが夢を見るシーンでは、カメラが回転してクローズアップする。
この映画のロケ地がいいですね。ピアニストのキンスキーが住んでいる古い大きな家は、ローマのスパーニャ駅近くで、駅近でこんな家があるなんてと多いながら観た。螺旋階段が出る映画は好きです。
ラストシーンが印象的だ。ラストタンゴ・イン・パリとは違ったその後が気になる。シャンドライの夫は政治犯として映画の冒頭に逮捕されるが、キンスキーのシャンドライを想う気持ちからの結果として釈放されてシャンドライの元に帰ってくるのだ。初めてシャンドライがキンスキーと夜を共にした朝、夫はキンスキー宅のドアベルを鳴らす。なかなかベッドから抜け出さないシャンドライ。朝になり日常生活が始まり街では駅から人が出始める。果たしてシャンドライのその後は・・・?
余談だが、シャンドライ役のタンディ・ニュートンの若い頃がUnflirtに似ているなと思いながら観ていた。
音楽
Shye - In The End
今月出たShyeの新譜からのMV
90年代って感じで好き。最近気付いたのですが、Video by Shyeってあるのでビデオも彼女が作っているのですかね?セルフプロデュースが凄すぎます。
新譜もよかったです!









