在りし日の印刷現場レポ「印刷に恋して - 松田 哲夫」を読んだ感想

在りし日の印刷現場レポ「印刷に恋して - 松田 哲夫」を読んだ感想

目次

直近に「タイポグラフィ・ブギー・バック」という本を読んだが、その本では写植からデジタルフォントの時代の変遷を著者の体験から描いたエッセイだった。そこでは本や漫画を読むときに活字のフォントによっての印象の違いが大きいことが述べられていた。

・読書感想
タイポグラフィ・ブギー・バック: ぼくらの書体クロニクル

また、「デザイン解体新書」という本では、文字組みやレイアウトに関する指定などが記載されている指定紙が掲載されており、プロのデザイナーがどのようにデザインを組み立てているかを知ることができる内容になっていて、丁寧な仕事ぶりがうかがえる一冊だった。

・読書感想
デザイン解体新書

今回紹介する「印刷に恋して」という本は、2002年刊行の本である。実際は「本とコンピュータ」という雑誌に連載されていた内容の単行本であり、印刷現場の様子は1997年から2001年の現場となるので。今とは大分様子が異なっているだろう。

余談だが、雑誌「本とコンピュータ」のグラフィックデザイナーは、「デザイン解体新書」の著者である工藤強勝さんだったので、妙なつながりを感じた。

印刷の仕組みが分かりやすいイラスト#

本の内容としては、長年編集者として仕事をしてきた著者が、飛躍的に進歩してきた印刷の現場の様子を、現場での体験を通して描いていく。登場する印刷技術としては、活版印刷・手動写植・コロタイプ・オフセット印刷・グラビア印刷・特殊印刷・電算写植などが出てくる。そこでの現場の職人さんたちにもスポットが当てられており、彼らの技術や仕事ぶりが生き生きと描かれている。

印刷技術を文章だけで説明するのは、難しい。そこで本書では、内澤旬子さんによるイラストが随所に挿入されており、写真よりも分かりやすく、細密な描写が機械の仕組みを理解する助けになっている。これは表紙を見てもらえれば一目で分かるだろう。

自分としては、画像処理が好きで勉強していたこともあり、オフセットの仕組みであったり、網点表現の説明などがイラストで分かりやすくて良かった。

在りし日の技術#

今の印刷現場はデジタル化が進み、この本で描かれていたような技術はほとんど見られなくなっているだろう。だからこそ、当時の職人たちの技術や仕事ぶりを知ることができるこの本は、貴重な記録となっている。

活版の時代は、鉛の活字を組み合わせて印刷を行う方法であった。活字棚から必要な文字を取り出して文字を組むなんて、今では考えられないと思った。大量の活字棚であるが、慣れると早く作業ができるようになるらしい。

この本で初めて知ったものとしては、「一寸ノ巾」式配列だ。これは文字の形から拾うことができる配列方式であり、基本見出し文字を五一種に整理し、これを覚えやすい語呂の順に並べたものである。今では手動で文字を拾うってことがないので、こんな配列方式が存在していたことを知ることができて面白かった。

・一寸ノ巾式配列について
http://ryougetsu.net/ab_issun.html

どうしても昔懐かしさや、アナログに良さを感じてしまうが、活版印刷のデメリットも知れた。すぐに分かるものとしては、生産性の低さだろう。重い鉛の版を扱うために、それを扱うための体力も必要であるし、場所の広さも求められる。また一人前の職人になるための字間も長く、修行が必要であることが分かった。

それに環境にも悪い。鉛などの金属を使うので、大量の廃液が発生してしまう。こうしたことを考えると、デジタルに置き換わるのは必然だったんだろうな。

デジタル時代のアナログ職人#

本書で印象的だったのが、「手の職人」から「目の職人」への変化である。デジタルへの移行で手作業の介入が少なくなる。その分、印刷物の色の仕上がりや品質を目で確認する重要性が増しているという点である。

現場でも、画像をきめ細かく調整していくレタッチの技について触れられていて、どんな色でも色分解のパーセントで答えられる職人さんの話が出てきた。

印刷所ごとの独自性を出すにはそれしか方法がない、ということになるのだろう。

まとめ#

在りし日の印刷現場の体験のレポ「印刷に恋して」の紹介でした。何よりイラストが分かりやすいので、印刷の知識がなくても読んでいて楽しめる一冊です。

こうした昔の印刷現場の体験をまとめた本は、今では貴重な記録となっているので、ぜひ手に取って読んでみてほしいです。

関連情報#

THE MAKING(10) 雑誌ができるまで#

「ザ・メイキング 雑誌ができるまで」のこの動画では、1998年に放送され、当時の雑誌がどのように作られていたかを知ることができます。ここでの印刷方式はオフセット印刷となっておりますが、動画で雑誌ができるまでの一連の流れを見ることができ、本書と併せて当時の印刷現場の様子を理解する助けになるでしょう。

トコトンやさしい印刷の本 (今日からモノ知りシリーズ)#

トコトンやさしい印刷の本も、イラストで印刷技術を分かりやすく解説してあり、印刷についての理解の助けになるでしょう。

大人の科学マガジン BESTSELECTION07 小さな活版印刷機#

去年出た大人の科学マガジンの小さな活版印刷機が気になります。小さいながらも、実際に印刷ができるとのことで、仕組みも理解できそうで余裕ができれば買ってみたいです。

活字が消えた日: コンピュータと印刷#

デジタル化によって、印刷所がどのように変わったかが描かれているらしいので、本書のその後の世界がどうなったのかが気になるので読んでみたいです。

「本」に恋して#

同じ著者とイラストレーターによる続編?がこちら。本の装丁から、紙やインキの開発、製本まで書かれているらしいので、この本も読んでみたいです。

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ヒルマ・アフ・クリントの絵画が表紙になっている書籍をまとめてみました
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はじめに

画家が描いた絵画が、書籍の表紙デザインに使われることはよくあります。例えば、アンリ・マティスの「イカロス」は書籍の表紙に何冊か使われていますね。

https://togetter.com/li/2677752

最近では、ヒルマ・アフ・クリントの絵画が表紙になっている書籍をいくつか見かけるようになりました。そこで、ヒルマ・アフ・クリントの絵画が表紙になっている書籍をまとめてみます。

祭壇画、グループX No.1

3点から構成される「祭壇画」のNo.1にあたる作品になります。スペクトラムの色調の三角形、太陽を模した光り輝く金属箔が神秘的な作品になります。

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公開日:2026-06-15
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女の子たちがプリクラやアプリなどで、目を大きく加工した写真などを見たことがある人は多いかと思います。

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ある日著者のもとに、フランス本社の化粧会社マーケティング部長の方が訪れる。その方は著者の「なぜ日本の女の子たちはそっくりな顔をしているように見えるか?」という記事を読み興味を持ったという。

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公開日:2026-05-09
更新日:2026-09-16
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「観音像とは何か 平和モニュメントの近・現代 - 君島彩子」を読んだ感想
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以前、宇都宮美術館の企画展のライシテからみるフランス美術のシンポジウムに行った際に、講演者の君島彩子先生の著書が気になっていたので、読んでみました。

また自分は出身が仙台なのですが、小学校の時に「仙台大観音」が校舎から見える位置にあったこともあり、なぜ巨大な観音像が誕生したのかや、観音像そのものについての興味もありました。

ふだん、仏教や歴史にあまり触れる機会がないため、個人的に久しぶりに関連書籍なども含めて知的好奇心が刺激される本でしたので紹介してみたいと思います。

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公開日:2026-04-04
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セルフマーケティングと継続力の鬼 「SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル 第2版」の感想
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どなたかは忘れましたが、自分が技術ブログを作っていた時に、いろいろ他の人の技術ブログを見ていて、この本キッカケで技術ブログを作成したという人がいて、ずっと気になってた本をようやく読めたので感想を書きます。

どんな本か

書籍のタイトルにあるように、ソフトウェア開発者向けの本ではあるのですが、不動産投資などの資産形成の話や健康の話なども書かれています。

この本は、いいソフトウェア開発者になるための方法を教えてくれる本でもあり、キャリアのマネジメント、目標の達成、人生の楽しみ方について書かれています。ソフトウェアについての本なのに、人生の楽しみ方についても触れられているのは、著者のジョン・ソンメズさんが、33歳で早期引退(FIRE)したことにも影響しています。

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公開日:2026-03-30
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UDデジタル教科書体開発物語「奇跡のフォント」を読んだので感想
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この本の著者である高田裕美さんと UD デジタル教科書体については、以前 Youtube の SCIENCE CHANNEL(JST)での動画ニュースで紹介されていて知りました。

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ちょうどフォントについてや、書体デザイナーについても興味があるので、この本を読んでみました。

文字を読むことに苦労している子どもたちがいる

ロービジョン(弱視)やディスレクシア(発達性読み書き障害)といった症状があることを知っていますか?私は、この本で初めて知り、教科書が読めない子どもたちがいることを知りました。フォントによっては、文字が重なってみえたり、ぼやけて見えたり、フォントの装飾が刺さるように感じる人がいる事実に驚きました。

そのような経緯を知り、著者は UD デジタル教科書体の開発を始めます。UD デジタル教科書体は、開発から 8 年を経てリリースされることになるのですが、その様々な経緯などを本書の中盤から書かれていきます。

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公開日:2026-01-21
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#フォント
「TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる」を読んだので紹介
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Zettelkasten(ツェッテルカステン)について学びたかったので、TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになるを読んだ感想です。

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読んだ経緯

以前、クリエイティブプログラマーという本を読んだ時に、Zettelkasten という手法を編み出したニクラス・ルーマンのことを知りました。

Amazon商品情報から引用

<AmazonLink imageId="81nmtchuZoL.SY522" linkId="450JeHq" title="クリエイティブプログラマー" author="Wouter Groeneveld" />

この本をきっかけに、ニクラス・ルーマンや Zettelkasten の手法について知りたいと思い、日本語で Zettelkasten について唯一紹介されている本書を読みました。

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公開日:2025-08-02
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#書籍紹介
#メモ術
小説版 機動戦士ガンダムを再読した
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2025 年は、機動戦士 Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)が放映された年でした。自分は途中からのリアルタイム視聴ができ、いろいろ不満がありながらも面白く一気見しました。

ちょうど 4 年前に「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」を劇場で観て、ガンダム熱が再熱してしまってファーストガンダムから V カンダム、F91 までの小説版を購入して読んだので、今回もまた GQuuuuuuX を見たきっかけで小説版を再読しようと思いました!

4 年前のガンダム熱が再熱したツィート...

<Twitter url="https://x.com/kameno_no3/status/1421415599486365697" />

小説版 機動戦士ガンダムについて

初代ガンダムを小説化したシリーズで、全 3 巻が発売されています。角川スニーカー文庫版を読みました。

<AmazonLink imageId="81GrNu1kooL.SY522" linkId="4o6HLIz" title="機動戦士ガンダム〈1〉 (角川文庫―スニーカー文庫)" author="富野 由悠季" />

小説版のガンダムは、アニメシリーズとは全然別物になっています。具体的には、ララァが第 1 巻の後半で登場するが、あっというまに退場したり、その後に小説オリジナルのニュータイプとして「クスコ・アル」なるキャラが登場したりします。

また、GQuuuuuuX の重要人物のシャリア・ブルはアニメ版では 1 話だけの登場でしたが、小説版では登場回数は多いです。

モビルスーツに関しても、第 1 巻でアムロが乗るガンダムが大破し、マグネットコーティングが施された G-3 ガンダムが登場します。シャアが乗るモビルスーツも、ジオングもゲルググも登場せずにシャア専用リック・ドムが登場します。

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公開日:2025-07-27
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#書籍紹介
#小説
#ガンダム
フォントのふしぎを読んだので紹介
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フォントのふしぎを読んだので紹介

フォントやタイポグラフィについて勉強したいと思い、フォント関連の本を読んでいきたいと思います。 手始めに読んだ「フォントのふしぎ」が良かったので紹介します。

<AmazonLink imageId="51Dtxr9LBSL" linkId="4nIcZFK" title="フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?" author="小林章" />

書籍と著者について

この書籍は 2011 年に出版された本です。著者は「小林章」さんで、ドイツ在住の欧文フォントの書体デザイナーです。他にも欧文書体などの本も書かれております。

海外に在住している書体デザイナーの著者が、街角で見つけたロゴや看板などの文字に関して写真を載せ、それをもとにフォントの話を展開していくという構成になっています。

カラーで写真も豊富に載っているので、見ていてとても楽しいです。

誰でも読みやすい、親しみやすい語り口

この本の魅力のひとつが、タイポグラフィの専門書でありながら、とても親しみやすい口調で書かれていることです。

たとえば、こんな一文があります。

「いっぽうで、1 とアイがまったく同じようなデザインのフォントもある(183 ページ)。別にどっちがイイとか悪いとかじゃないんで。」

こんなふうに、小難しい話をわかりやすく、時にはちょっと笑えるような軽やかさで解説してくれるので、まるで話のうまい先生の授業を聞いているような気分になります。

また、ヨーロッパで撮影された実際の看板や街中の文字を写したスナップ写真も豊富に掲載されていて、「フォントが使われている現場」の臨場感をリアルに感じられるのも大きな魅力です。そこにはきちんとフォント名とメーカー名も添えられているので、実用的な知識としても役立ちます。

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公開日:2025-05-09
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#書籍紹介
#フォント
読んだ本リスト
レストランの誕生 ――パリと現代グルメ文化
レストランの誕生 ――パリと現代グルメ文化
レストランの誕生 ――パリと現代グルメ文化
文化論
人文・思想・社会
著者
レベッカ・L・スパング
発売日
2021年10月10日

レストランが食べる場所を意味するようになるまでは、数世紀にわたって、レストランといえば食べる物、すなわち元気を回復させるだし汁のことであった

本書では、小さなカップ一杯のブイヨンから、現代の意味での場所としてのレストランが出現する過程を辿っていきます。

初期のレストランが食を提供したのは、食欲を失い疲れ果てた口と虚弱な胸に悩む衰弱した者たちに対してでした。その起源から見ても、レストランは必ずしも豪華な食事とは無縁だったことが知れます。

しばしばレストランはフランス革命により貴族などに雇われていたシェフが開業したとの言説がありますが、革命前から自分の事業に身を投じているのでその言説は間違いであると著者は述べます。こうした飽食の時代としてのレストランではなく、本書では空間・場所としてのレストランを見ていくことができるでしょう。

ヨーロッパの食文化としては、イギリスではカフェがありますが、パリのレストランの文化とは何でしょう。レストランをすでに存在していた他の公共食堂の類と区別していたのは、ブイヨンとライスクリームの載ったメニューであったと同時に、そのサービス様式であったといいます。例えば、定食用のテーブルであったり、密会の場にもなった個室、料理のメニューのリストの必要性などです。

メニューの存在により、レストランは初めて、実際に料理を分け合うことなく他人と食事をともにすることを可能にしました。カフェの客は新聞を読み、身の回りの世界について考えますが、レストランの顧客はメニューを読み、自分自身の体調を考えたのでした。

本書を読むことで、「レストラン」という概念を違った視点で見ていくことができるでしょう。著者自身が述べているように「レストランについて本を書くとは、ほとんどすべてについて本を書くようなもの」なのだから。

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「レストランの誕生 ――パリと現代グルメ文化」の参考文献一覧

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公開日:2026-10-30
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#文化論
#人文・思想・社会
レタースペーシング タイポグラフィにおける文字間調整の考え方
レタースペーシング タイポグラフィにおける文字間調整の考え方
レタースペーシング タイポグラフィにおける文字間調整の考え方
フォント
デザイン
著者
今市達也
発売日
2021年7月20日

意外にも類書がないレタースペーシングについて書かれた本。

レタースペーシングとは、文字の間隔を視覚的に均等に見えるように調整する作業のことです。デザインにおいて、文字の詰め方で読みやすさや見た目の印象が大きく変化します。デザイン初学者にとっては、文字間を意識することは少ないかと思われますが、プロのデザイナーにとっては、この文字間に常に気を配って文字組みを行っています。

そもそものレタースペーシングの歴史では、金属活字の時代では、正方形に収められている活字の影響で活字同士がぶつかって文字詰めをすることが技術的にできませんでした。しかし、写植に以降したことで文字が詰められるようになります。その時代(1960年代)以降の日本の雑誌では、見出しの字間を極端に狭くするレタースペーシングが流行していたみたいです。

このことを踏まえると、時代や技術が変化すると文字の組み方が変わり、それに合わせてスペーシングに対する価値観も変わっていくと著者は述べます。また、和文と欧文でも文字の形状やボディ、ベースラインの考え方が違うでしょう。本書のようなレタースペーシングについての入門書を読むことで、文字に対しての基礎知識を得ることで、なぜそのスペーシングなのかを感覚ではなく言語化して説明できるようになり、「なんとなく」からの卒業ができそうです。

本書の最後では実際のロゴタイプを例にとり、なぜそのスペーシングなのか解説してくれます。ロゴタイプは企業としても大事なものであり、目にする機会も多いため、そのスペーシングに対しての考察は勉強になります。例えば、商品パッケージで縦組みと横組みのロゴタイプがある場合は、それぞれで文字の形を微妙に変化させスペーシングを調整しているなど、すごいなと思いました。

今まで文字組みをなんとなく行っていた方が読むと勉強になるので、おすすめの一冊となります。

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「レタースペーシング タイポグラフィにおける文字間調整の考え方」の参考文献一覧

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公開日:2026-10-29
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#フォント
#デザイン
トンデモと科学のあいだ
トンデモと科学のあいだ
トンデモと科学のあいだ
サイエンス
著者
田口 善弘
発売日
2026年9月9日

科学・物理学の世界では、中身や理由が分かっていない、かつてはトンデモな扱いだったものが、今では主流になったりする。

生成AIはどうだろう。科学者も中身が分かっていないながらも使用しているという。科学の歴史がそうであったように、恐れずに生成AIを使用していこうというのが主張か。

正直、科学のトンデモな概念の歴史と、生成AIとの議論がつながってなくない?となり、あまり話が入ってこなかった。

生成AIがどのようにして答えを出力しているのかを著者は知っているのかと、書きぶりから心配したが、ブルーバックスから出ている「はじめての機械学習」の著者でもあるのですね。それなら、今の科学者がどのようにして生成AIを使用して研究しているのかを書いて欲しかったな。

そもそも、「科学者が中身が分からなくても生成AIを平然と使えるのはなぜ?」と疑問に思ったことがないので噛み合わなかったかも。

題名から、ニュートンが晩年錬金術に情熱を注いだみたいなトンデモ話のことが書かれているのかと思って買ったんだけれども、錬金術みたいなトンデモ話は出てこなかったです。

収穫としては、ガリレオとケプラーの話でしょうか。あとは、参考文献にも複数挙げられている山本義隆の著書群が気になりました。

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「トンデモと科学のあいだ」の参考文献一覧

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公開日:2026-10-20
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#サイエンス
センスをみがく文章上達事典 新装版
センスをみがく文章上達事典 新装版
センスをみがく文章上達事典 新装版
文章術
著者
中村 明
発売日
2016年12月9日

多くの文章術の著書がある中村明氏の文章観のエッセンスを一望できる一冊である。

本書の構成は基礎編、応用編、実践編の三つに分かれる。第Ⅰ部「書く」では、相手に正しく伝わる文章を書くための基礎的な技術について書かれている。第Ⅱ部「練る」では、「表現をゆたかに」とあるように小説などでの表現技法について解説されている。第Ⅲ部「研く」では、「文体をしなやかに」とあるように自己のスタイルを確立するまでや、文章の深みといった点について書かれている。

全体として、プロの実例をもとに解説していく流れになる。よりよい文章を書きたい人にもおすすめだが、実例にもある小説についての読み方の視点も変わっていきそうだ。

「センスをみがく」ということは、多く良い文章に触れていくことなのだろう。
本書の見出しをみるだけでもためになりそう。

書く - 文章をはっきりと

  • 句読点のルール - 打つも打たぬも思いやり
  • 記号類の活用 - 使いすぎは品格をおとす
  • 漢字・ひらがな・カタカナの使い分け - 文字に思想をこめて
  • 漢字の書き分け - ニュアンスを書き分ける
  • ことばの選択 - 三方向から一語にしぼる
  • 和語と漢語 - 硬軟おりまぜて
  • 擬声語・擬態語 - 感覚の新鮮さがいのち
  • 修飾語を効果的に - 適量のさじ加減
  • 並列 - 両輪をバランスよく
  • 語順と表現意図 - 繰り出し方で感じが変わる
  • 文末表現 - 足もとのおしゃれ
  • 文構造と文の筋 - 述語は忘れないうちに
  • 文の長さ - 手を抜くと文が長くなる
  • わかりやすい表現 - 読まれなければ始まらない
  • あいまいな表現 - 誤解の芽を摘む
  • 文と文との接続 - 関係は書き手がつくる
  • 段落づくり - 迷ったら改行する
  • 引用を明記する - 借用証書のすすめ
  • 敬語表現 - 形式よりも気持ちが問題
  • 読者への配慮 - いやいや読む人の身になって
  • 執筆態度を明確に - 情報を鼓動とともに
  • 構想と展開 - 調理の腕で素材が生きる
  • 文章の調子 - こなれがいいほど心になじむ
  • 推敲 - 見知らぬ読者になりすます

練る - 表現をゆたかに

  • 情報待機 - サスペンスをつくりだす
  • 漸層・漸降 - 上りと下りは勢いが違う
  • 倒置表現 - 計画的に取り乱す
  • 反復法 - 畳みかけて弾みをつける
  • 尻取り文 - 展開は鎖のように
  • リズムのある文章 - 軽くステップを踏んで
  • 対句表現 - 形式美はシンメトリックから
  • 挙例法 - 理屈より実感
  • 列挙法 - ことばの洪水で圧倒
  • 省略法 - 沈黙がものをいう
  • 名詞止め - ことばを置き去りにして
  • 否定表現 - 打ち消すのもレトリック
  • 婉曲表現 - 身もふたもある
  • 反語表現 - ばれるように嘘をつく
  • 比喩表現 - 心の風景をのぞかせる
  • 擬人法 - 万物と語らう
  • 洒落 - ことばで遊ぶ
  • パロディー - 二重映しの愉しみ
  • 現写法 - 臨場感を高める
  • 誇張表現 - 望遠レンズで迫力を
  • 逆説 - 常識を逆なでする

研く - 文体をしなやかに

  • 語感 - ことばのにをいを嗅ぎ分ける
  • 書き出し - もう読まずにはいられない
  • 結び - ギュッと締めて、フワッと放す
  • 書き手の視点 - カメラワークを意のままに
  • 人物描写 - のこのこ歩き出す
  • 心理描写 - 心のひだを映し出す
  • 感覚描写 - イメージに限りなく近づける
  • 自然描写 - 風景に体温を添えて
  • 表現の深さ - ことばに奥行きを感じるとき
  • 表現の間 - 息づかいが聞こえる
  • 余韻・余情 - 文章の奥へ、その先へ
  • ユーモア - 弱さや愚かしさをしみじみと笑う
  • スタイル - 譲れない文体の熟すまで
  • 文章の雰囲気 - 表現の奥に人のけはいを聴く
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公開日:2026-10-25
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#文章術
日本語の作文技術
日本語の作文技術
日本語の作文技術
文章術
著者
本多 勝一
発売日
2015年12月6日

1982年に刊行された文章術の名著となります。

この本は、小説などの物語を書くためではなく、「事実的」「実用的」な文章を分かりやすく書くための本になります。悪い文章の例を提示しながら、どの部分が読みづらくなっているのや、改善方法などが解説されています。

自分では良い文章だと思っていても、他人から見たら読みづらい文章になっていることがあるでしょう。著者自身も例外に漏れず、悪い文章の例として、自分の文章も提示されています。日本語の文章を分かりやすく書くことの難しさを感じます。

日本語は非論理的だと外国語を優遇する人たちを著者は批判します。そうではなく、日本語を使いこなせない「使い手自身」こそが非論理的なのであると主張されているのが印象的でした。

学校で習う日本語の文法は、明治以降の西洋の文法からの影響に築かれたものであるので、本来の日本語にそぐわない形で体系化された経緯があります。英語などの影響により、文章の最初に「主語」を書かなくてはいけない風潮がありますが、日本語には「主語」は存在せず、あるのは「主格」にすぎないとの論には、なるほどなと思いました。

文章術の本を読んでいくと、いかに分かりやすい日本語で書くことが難しいのかを感じます。読みやすいリズムかどうかは、朗読してみれば分かると本書にかかれていたので、こうしたブログを書く際に実践してより多く文章を書いていきたいです。

関連サイト(外部サイト)
「日本語の作文技術」の参考文献一覧

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公開日:2026-10-17
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#文章術
現代メディア史 新版
現代メディア史 新版
現代メディア史 新版
メディア
著者
佐藤 卓己
発売日
2018年11月27日

本書の初版は1998年に刊行されたが、2018年に新版として新たにインターネット後の時代も追記された。

ジャーナリズム論は、「その内容は真か疑か」を問うが、メディア論は「その影響力は大か小か」を問う。メディア論においては、内容の真偽は影響力の大小ほどに重要ではないと、序盤に著者は言う。

著者の専門であるドイツ史をはじめ、イギリス、アメリカ、日本のメディアによる影響力を時系列的に比較して論じるのが本書である。

各章は次のようになる。

  • メディア史としてのコミュニケーション研究
  • メディア都市の成立
  • 出版資本主義と近代精神
  • 大衆新聞の成立
  • 視覚人間の「国民化」
  • 宣伝のシステム化と動員のメディア
  • ラジオとファシスト的公共性
  • トーキー映画と総力戦体制
  • テレビによるシステム統合
  • 情報化の未来史

各種参考文献も豊富なので、気になった章については、そこからさらに深く学ぶことができるでしょう。

関連サイト(外部サイト)
「現代メディア史 新版」の参考文献一覧

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公開日:2026-10-18
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#メディア
メディア論の名著30
メディア論の名著30
メディア論の名著30
メディア
著者
佐藤 卓己
発売日
2020年11月6日

歴史学は現在から過去を解明し、メディア論は現在から未来を展望する

何をメディア論と呼ぶのか、選書の基準として3つ挙げています。

  • メディア論とは比較ミディウム論である。つまり、狭義な新聞論、テレビ論など個別ミディウムに関する書物は除く
  • メディア論とはメディア史である。つまり、純粋な理論研究、フィールド研究は除く
  • メディア論は長い射程の文明論である。つまり、選挙分析など短期的な調査研究は除く

この基準を元に章立てのキーワードとして、「大衆宣伝」「教養主義」「情報統制とシンボル操作」「メディアイベントと記憶 / 忘却」「公共空間と輿論 / 世論」「情報社会とデジタル文化」があります。

いわゆるガイド本といったタイトルになりますが、実体は著書自身の研究で役に立った書物を選出しており、研究遍歴を見ていくことになります。本の要約が知りたい人には不向きなのかもしれません。

また、今では手に入れるのが困難な書物もあります。本書刊行後に復刊された本もあるので、ちくま学芸文庫にはがんばってもらいたいですね。

30冊の選書の最後には、「読んでいない本について堂々と語る方法」が紹介されています。メディア論の大家でもある著者ですが、すべての本を完璧に読んでいるわけではないことを知り、安心できますね。「読まなくてもいい。読むべき本は買っておきなさい」といったとことでしょうか。

関連サイト(外部サイト)
「メディア論の名著30」の参考文献一覧

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公開日:2026-10-13
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#メディア
スリップの技法
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本屋
ビジネス
著者
久禮 亮太
発売日
2017年10月30日

本屋に行く楽しみが増える一冊。

再販維持制度があるので、どの新刊書店に行っても、本の値段は一緒である。また本屋は仕入れた本を返品できたりするので、どの本を仕入れるかが、その本屋の独自性になる。

本書は、新刊書店の書籍に挟まっている細長い紙切れであるスリップの活用方法を書店員に向けて書かれている。書店員のために書かれた本ではあるが、そうでない人にも書店員の仕事が分かり楽しく読むことができるだろう。

本にはその本とつながりが作れる関連書籍が多数あるだろう。書店ではそれをたとえ違うジャンルであろうが、隣に並べたり、平台に載せて販売している。そうした関連書籍の作り方を、売れた本であることが分かるスリップから考えていく。

本屋の仕事の忙しさも読んで感じた。著者は、あまり本を読んではいないというが、関連書籍をつなげる豊富な知識に驚かされる。「読んでいない本について堂々と語る方法」に本の内容を読んでいないが全体を把握している司書の話が出てくるが、書店員も同じように、その本の文脈や全体像、分類を把握して本を売っているのだろう。

返品制度があるから、仕入れた本をすべて売り切るという発想ではないのだなと知った。ついでに手に取られた本が書店を維持するのに大切なのだ。

自分もいろんな新刊書店に行ってみて、書店員がすすめる「ついでの本」を買っていきたい。そんな風に感じた読書体験でした。本屋に行くことが好きな人におすすめです。

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公開日:2026-10-12
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#本屋
#ビジネス
炎の中の図書館 110万冊を焼いた大火
炎の中の図書館 110万冊を焼いた大火
炎の中の図書館 110万冊を焼いた大火
人文・思想・社会
著者
スーザン・オーリアン
発売日
2019年11月18日

1986年にアメリカ史上最悪の図書館火災があった。その場所は、ロサンゼルス中央図書館である。放火犯として疑われた青年は、俳優志望で虚言癖のある男である。彼の供述は二転三転するが、証拠不十分で刑事告発は見送られるし、火事から7年後に亡くなってしまうので、この火事の真相は分からずじまいである。

真相が分からない事件なので、書くことも少ないのであろう。ページ数が多いが、残りはこの図書館の歴史や、歴代の図書館司書などが短い章で書かれていて、非常に読みづらかった。

図書館そのものの話としては、公共性としての図書館の役割がアメリカと日本で違うのが印象的だった。ロサンゼルスではホームレスの人が多いらしい。図書館はその人たちにも無料で居場所を提供できる唯一の場所とのことだ。

燃えた後の本の扱いにも驚いた。なんと冷凍で保管するらしい。というのも濡れた本はカビが生えてしまうからだ。この冷凍庫の貸し出しに協力する企業の話も出てくる。町にとって図書館は大切な場所なのだろう。

関連サイト(外部サイト)
「炎の中の図書館 110万冊を焼いた大火」の参考文献一覧

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公開日:2026-10-07
Tags:
#人文・思想・社会
本屋、はじめました 増補版
本屋、はじめました 増補版
本屋、はじめました 増補版
本屋
著者
辻山 良雄
発売日
2020年1月9日

荻窪にある新刊書店「Title」の店主である辻山さんの著書です。
辻山さんは、Titleを開業する前にリブロという書店で働いていました。
前半ではリブロで働いていたなかで気づいたことを、後半ではなぜ新刊書店を開いたのかが語られます。

新刊書店を開く前に行う準備のことなどが、赤裸々に描かれており、新しく独立系の本屋を開きたい人に参考になる内容も多いかと思います。店の場所の選び方や、ロゴ、ブックカバーなどについての記載があります。

文庫版の増補では、単行本発行から五年が経過したその後のTitleのことが書かれています。売上や利益のことについても書かれてある。

印象的だったのが、人とのつながりのことだ。
小さなお店をやることは地域の人びととの結びつけが大切なのだろう。

新たに本屋をやりたい人も、小商いを始めたい人も、本屋のことが好きな人も参考になる1冊だと思います。

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公開日:2026-10-06
Tags:
#本屋
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