【月報】2026/07 世界は鳴りひびく
美術館
プレイバック!ミレニアム1991→2001:版画が/版画で越えた境界 - 町田市立国際版画美術館

町田の版画美術館で開催されていた展示会に行ってきた。以前開催された5つの展示会を振り返る構成。自分は版画などの複製技術が好きなのだが、その中でも、複数の材料/メディアの組み合わせだったり、コラージュの技法を使用された作品が好きだということを再認識した。
町田市立国際版画美術館には初めて行ったが、版画美術館って名称の割に企画展しか展示がなく、所蔵作品が観れる常設展示がないのは少し残念だった。
カンディンスキー 世界は鳴りひびく - 宇都宮美術館

宇都宮美術館で開催されたカンディンスキーの展覧会に行ってきた。この展覧会では、国内の所蔵作品を元に展示されている。意外にもカンディンスキーの展覧会は2002年以降開催されていなかったらしい。今回は、宇都宮美術館、宮城県美術館、長野県立美術館で開催される。
展覧会のはじめは、1901年のフォーランクス展ポスターからだ。カンディンスキーの抽象絵画の前の版画や、油絵の作品を今回はじめて観ることができた。版画作品の「夕暮れ」「鏡」のような、人物と背景が同化している作品が初期作だと好きな感じだった。
カンディンスキーに影響を受けた日本の作家の作品も展示されている。どちらかというと、影響を受けた日本の作家の作品の方が好きだった。神原泰の作品は、色の塗り照りの表現が真似したいと思ったのと、斎藤佳三の「リズム模様半襟」は抽象的な図形を刺繍で表現していて面白かった。
本
デジタル記号論—「視覚に従属する触覚」がひきよせるリアリティ
メディア論/記号論といったジャンルについて、本書ではじめて触れました。記号とメディア/視覚と触覚/空間と身体についての現代的な関係性を様々な文献を参照しながら論じてます。
このジャンルにはじめて触れたが、正直これが知識として有効に使える人はどんな人なんだろう。アーティストなどの創作者以外にこの知見を活かせる人はいるのだろうか。特になるほどって思うことがなかったので・・・。ジャンル自体は興味があるので、他にもメディア論/記号論の本は読みたい。
インフラグラム 映像文明の新世紀
本書のタイトルでもある「インフラグラム」とは著者の造語だ。情報社会のインフラとなった写真・映像などのメディアを指す。通常のインフラと同様に、それまでに目に見えていたものがインフラ化することで目に見えなくなる。すなわちブラックボックス化であり、中身など一般には知りようもなくなる。インフラグラムはメディアのブラックボックス化を伴う。
3章からは、軍事や米軍基地などからの考察になり、展開が飛躍したように思えるが面白く読めた。早逝された三上晴子の作品・展示から「視る」ことを考える。アートには目に視えないモノの特殊な存在様式を顕わにすることができると感じられる1冊だ。
デジタルメディアと日本のグラフィックデザイン その過去と未来
本書は2017年に展示されていた「デジタルメディアと日本のグラフィックデザイン その過去と未来」の展示図録である。過去と未来を扱う展示会だった。70年代から、シンギュラリティの到来とされる2045年までの未来を考える。
時代を経て見えてくるのは、インターネットの誕生によるインタラクティブな表現の可能性だ。この展示会には行けなかったが、似たような展示があれば行きたいと思った。
融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論
一部界隈では必読書となっている本書。「自己帰属感」という概念で、デジタルの体験をより良くする考え方は非常にためになるであろう。第1章のタイトル「Machintoshは心理学者が設計している」にあるように、著者は理系的なエンジニアリングの知識だけではなく、リベラルアーツを織り交えた発想を持つことの重要性を説く。
透明性から自己帰属感へ、認知心理学の視点からヒューマンインターフェイスが解説されているのが面白い。デザイナーにもエンジニアにも読んでほしい1冊だ。
看護のための生命倫理〔改訂三版〕
生命倫理の問題事例を紹介し、問題について考えさせる本書。看護を学ぶ学生を対象として書かれているが、そうでない人でも考えるきっかけになるであろう。
生命倫理の問題は、どちらが正しいか、正しくないかという二元論で答えられるものではないであろう。事例としては、安楽死の問題からはじまり、テクノロジーが進歩してからの問題、そして遺伝の問題としてのヒト・ゲノムの問題まで幅広く扱われている。
クック・トゥ・ザ・フューチャー 3Dフードプリンターが予測する24 の未来食
「3Dフードプリンター」に焦点を当てて、2055年の未来の食を予想図や食品サンプルで提示して描き出す。未来のテクノロジーで何が「できる」ようになるかを章立てで紹介している。
3Dフードプリンターの技術的な部分の説明は無く、ただの予想ではあるので正直実現できるか微妙ではと思ったものもある。例えば、複雑な形状のプリントは時間的なコストがかかりそうだったり、食べられそうにないものも、食べられることに関しての問題性がありそうなどだ。
しかし、紹介された未来の食のアイデアの中には面白いものもあったのでよかった。下記のサイトのプロジェクトも面白そう。
映画の人びと
写真家、渋谷典子の女性カメラマンの映画撮影の現場での体験記。これまで写真の世界にいたが、「制覇」という映画でスチールカメラマンの仕事を始める。
映画業界のしきたりなど、違う分野から来た著者が戸惑いながらも、映画の現場での体験を綴る。章の終わりに著者が撮った写真なども載ってあり、映画の現場の雰囲気が伝わってくる。銀幕スターの素顔と映画職人たちの映画作りに賭ける情熱を写真と文で綴っていて面白いです。
美学への招待
「美学」についての新書。日々の生活のなかで出会っている美学的な疑問や、美学の問題とは思わずに抱いているさまざまな疑問符を取り出して、それを考えてみる。簡便な文章で書かれているが故に、内容が飛んでる印象を受けた。著者の言葉に対する重きは感じられる。たとえば、「センス」、「ミュージアム」などだ。
現代の美学についての考え方を知ることができる1冊なので、美学に興味がある人はぜひ読んでみてもいいのでは。
映像クリエイターのための完全独学マニュアル 不可能を可能にするテクニック
映像クリエイターが独学で本で学ぶのに最適な1冊であろう。自分自身は映像を作成する予定はないが、映画を事例にカメラワークの意図や、照明の意図などを解説しているので、映画を観るときに参考になる。カメラの説明から、構図、脚本、編集まで幅広く解説されており、映像制作の全体像を知ることができる。映像制作に興味がある人はぜひ読んでみてほしい。
オンスクリーン タイポグラフィ 事例と論説から考えるウェブの文字表現
「オンスクリーン タイポグラフィ」は、その名の通り、スクリーン(画面)上のタイポグラフィについてだ。9名の執筆者がそれぞれのテーマで論説をまとめている。
また、Webサイトではあるが事例も豊富である。Webサイトなので、実際にブラウザで表示して確認できるのがよい。Webの文字表現について、Webデザインに関わる人はぜひ読んでほしい1冊です。
映画
美女ありき
以前読んだ本イギリス的風景: 教養の旅から感性の旅へに、ハミルトン、エマ、ネルソンの三角関係の話が出ており、興味があったので映画化された本作を観た。
教養の旅であるグランド・ツーリストのなかでも、文化的影響力を与えた人物でもあり、美術蒐集家でもあるウィリアム・ハミルトン。彼の名声を落としたのは、ヴィヴィアン・リー演じるエマ・ハミルトンの存在である。ネルソン提督との三角関係が世間に知れ渡り、諷刺画で揶揄されることになる。芸術に対して目利きであるのに、小娘に恋して盲目になり「史上もっとも有名な寝取られ男」に成り下がったハミルトンの姿は哀れだ。
また、ハミルトンは火山の研究もしていた。映画でもヴェスヴィウス火山が出てくるのは、そのことも踏まえてだろう。
さて、映画ではウィリアム・ハミルトンの描写は少ない。ネルソン提督とヴィヴィアン・リー演じるエマ・ハミルトンがメインで描かれる。ネルソンにも夫人がおり、ダブル不倫となるこの関係。ネルソン夫人とエマのバチバチの描写は怖いよー。
白黒映画によっての映像美もこの映画の魅力だ。ヴィヴィアン・リーの美しさを陰影の繊細さで切り取るショットの数々。まさに「美女ありき」の題名にふさわしい映画なのだ。
スーザン・ソンタグの小説「火山に恋して」に、この三角関係が描かれているらしいので、この小説も読んでみたい。
音楽
Joy Division - Disorder
久しぶりにJoy DivisionのMVを見て、このMVの映像を真似したいと思って、技術ブログの方で再現してみた。そこから今月はずっとJoy Divisionばかり聴いていました。
immi - Echoes
immiが復活して嬉しいです。この曲は復活して2曲目だと思うのだけれども、サウンドがより進化していてすごく好き。近いうちにアルバム出してくれたら嬉しいな。











