【月報】2026/10
美術館
鴨居 玲 カメラが捉えた画家の素顔 - 笠間日動美術館

笠間日動美術館には「鴨居の部屋」と呼ばれる展示室があり、鴨居玲の所蔵作品は多いです。鴨居と日動美術館との関係は、以前読んだ本「鴨居玲 死を見つめる男」に書かれています。
本展示会は、鴨居の最後のパートナーであった写真家の富山栄美子の写真と共に鴨居の作品を見ていきます。鴨居は飼い犬のことが好きだったみたく、じゃれあっている写真は微笑ましく思いました。また、海外流で家では靴を履いて生活をしていたとの記述も本にはありましたが、本当にそうだったんだと鴨居のエレガントな写真を見て思いました。
笠間日動美術館にこれほど多くの鴨居の作品があるのは驚きました。初めて見た作品としては、晩年に家の襖に描いたと思われる、自画像である首と首吊りの絵です。本当に病んでいる人が描いたんだと思わされる絵を、こうして美術館で外観を整えて展示されているのは、怖さを感じました。映っている写真からは、そんな苦悩も見いだせないのも相まって。
没後50年 髙島野十郎展 - 宇都宮美術館

以前、日曜美術館で髙島野十郎の特集をやっていたのを見て、気になっていた画家で、今回、宇都宮美術館で観ることができました。初期はゴッホなどから影響を受けた画風でしたが、次第に自分の画風を手に入れていったのが印象に残りました。
光の表現が好きでした。「こぶしとリンゴ」という作品では、窓際に置かれた花瓶とリンゴが描かれていますが、窓からの光が柔らかい表現になっていて好きな作品です。
最後の暗い展示では、代表作である蝋燭の作品と月の作品が展示してありました。暗い背景も相まって光が輝いてみえ、展示方法の素晴らしさを感じました。
作品は個人蔵が多かったです。生前はあまり評価されていなかったとのことですが、たくさんの作品が今でも残っていて、こうして観ることができてよかったです。
本
本棚の歴史
「フォークの歯はなぜ四本になったか」の著者で知られるペドロスキーによる、普段注目されない本棚にフォーカスを当てた本書。本棚を語るには、本についての歴史を見ていく必要がある。古代には今のような形態の本は存在しておらず、巻物だった。それから冊子に変化して、昔は貴重だったので鎖をつけて固定されていた。
鎖がついているということは、今の形の本棚ではないことが分かるだろう。他にも昔は、本の背には題名や著者名がなかったことや、本を保管する図書館についての話も出てくる興味深い一冊でした。
炎の中の図書館 110万冊を焼いた大火
かつてアメリカ最大の図書館火事があった。放火犯として逮捕された俳優を夢見ていた青年は、本当に図書館に火をつけたのか。傷ついた本は救えるのか?
題名や装幀から上記の内容を想像するが、実際にはロサンゼルス中央図書館の火災の話は、全体の10%程度だった。というのも、放火犯として逮捕されたハリー・ピークは、火事の7年後に亡くなっており事件の真相は分からずじまいである。
ほかに何が書かれているかというと、ロサンゼルス中央図書館の歴史などが、短い章で書かれている。ページ数も多いし、読みづらかったが、アメリカにおける公共施設と日本の場合との違いが見て取れたことだけが良かったのかも。
本屋、はじめました
荻窪にある新刊書店「Title」の店主である辻山さんの著書。リブロ時代の話から、独立して自分の店を持つまでの経緯が描かれています。独立するまでにあたり、何を考え、どのように行動してきたのかが具体的に書かれており、本屋以外の独立・起業を考えている人にも参考になる一冊です。辻山さんの誠実さが、店内にも流れているのだなと感じる一冊でした。
スリップの技法
スリップとは、新刊書店で書籍に挟まっている細長い紙切れのことである。本書は書店員のために、このスリップを活用した本の仕入れについての考えたかが書かれている。書店員のためとあるが、そうでない人でも書店の裏側を知れる面白い一冊だ。どのような本を仕入れて並べるているのか。これを読むと新刊書店に行き、本を眺める楽しみが増えるだろう。
メディア論の名著30
メディア論を勉強したいと思い、ガイド本としての本書を読んだ。実際は、著者の研究遍歴となっており、今は手に入るのが難しい文献も多く紹介されています。
メディア論といっても、色々な学派があるということでしょうか。まずは著者の佐藤卓己氏の著書を読んでみたいと思ったガイド本でした。
現代メディア史 新版
「メディア論の名著30」と同じ著者によるメディア論の入門書である。メディア論において、内容の真偽よりも、メディアによる影響力を見ていくことの方が大事である。本書は、日本・アメリカ・ドイツ・イギリスにおける各種メディアの影響力を比較しながら論じている。
教科書的な横書きで書かれているので、手元においておくといいだろう。各種参考文献も豊富なので、気になった章については、そこからさらに深く学ぶことができるでしょう。
日本語の作文技術
文章術の名著である本書は、「事実的」あるいは「実用的」な文章を書く方法が紹介され、分かりやすい文章を書きたい人にとって参考になる一冊です。主に句読点のうちかたや助詞の使い方が参考になりました。
センスをみがく文章上達事典 新装版
こちらは、前半は分かりやすい文章を書くための基礎について書かれているが、後半は、小説などの文章表現について解説されています。どちらも例文を元に解説していく形になります。文学的な文章を書きたい人にはおすすめでしょうか。文章術の本を読むことで、小説の読み方も変わっていきそうと思いました。
トンデモと科学のあいだ
我々は生成AIを普通に使っているが、その中身は分からないトンデモのような存在だ。翻って科学といったものは、中身をちゃんと理解して、問題を問いてきたのであろうか?
いや違う。本書では、今ではトンデモな概念がかつては主流の学説だったり、今では当たり前の概念がかつてはトンデモ扱いだったり、トンデモ仮説から正しい答えが導かれたり、こじつけの理由が実は正しかったり、結果も導出過程もトンデモなのに現実に合っていたり、挙げ句の果てはトンデモのほうが本質にして真実であったりする事例を紹介されている。
教科書に載らない物理学の悪戦苦闘の歴史を知ることができる一冊である。
レストランの誕生 ― パリと現代グルメ文化
パリで生まれたレストラン。このレストランの誕生と、社会に受け入れられ、やがて社会を変える存在になるまでを膨大な資料から描き出した一冊である。イギリスではカフェ文化がありましたが、フランスのレストランは、カフェとどう違うのかを考える上でも参考になるでしょう。
レタースペーシング タイポグラフィにおける文字間調整の考え方
レタースペーシングとは、文字の間隔を視覚的に均等に見えるように調整する作業のことです。デザインにおいて、文字の詰め方で印象が大きく変化します。本書は、この文字詰めについての基本を分かりやすく解説されており、実際に自分の言葉でスペーシングについての考え方を持つことができ、「なんとなく」の文字詰めからの卒業が可能になるかと思いました。
文字詰めについて、それ1冊で書かれた本は少ないと思うので、興味のある方にはぜひ手に取ってほしい一冊です。
タタール人の砂漠
映画
トト・ザ・ヒーロー
「昨日と同じ今」
この映画のキーワードとして、時間と炎が上げられるだろう。上記の発言は劇中に2回登場する。1回目は、母親の葬儀の帰り道の車で、自閉症の弟と話している場面。2回目は、姉の面影が映るエブリーヌと音楽仲間たちとの場面で、何か面白い話をと振られてからの発言だ。
人生というものは、火葬場で炎に焼かれ灰になって終わる。主人公トマの場合は、はじめに炎があった。彼の赤ん坊のころに産院での火事騒ぎがあった。向かいの裕福なカント家には同じ誕生日のアルフレッドという少年がおり、トマは自分は取り違えられたのだと思い込んでいる。
トマの父親は、カント家のために飛行機事故で亡くなる。姉アリスは、父の復讐のためにカント家を放火した際に、炎の中で命を落とすことになる。
映画の冒頭は、老年のトマがアルフレッドを憎んでいる場面から始まる。「なぜ、トマは幼なじみのアルフレッドを憎むようになったのか」映画は、少年時代、青年時代、そして老年時代の3つの時間軸を交錯して物語が進んでいく。
ほんの取り違えで、ありえたかもしれない出来事が頭の中では妄想できる。だが、映画という物語として固定されると、それは決定された出来事になるのだ。
音楽
CHVRCHES - Good Girls
今月はCHVRCHESばかり聴いていたかも。初期しか知らなかったけれど、この曲はMVも相まってすごく好きな曲でした。
syrup16g - セブンティーン
syrop16gの新曲のMVがこの時代に見れるなんて。新譜も決して派手ではないけれど、シロップらしい曲ばかりで嬉しい。これから何度も聴いていくアルバムになりそうだ。
ART-SCHOOL - Tenement Angel / The Fragile Song
まさかART-SCHOOLとsyrop16gの新作発表が同じ日になるなんてって、嬉しい気持ちになった2026年10月でした。
最初にART-SCHOOLの新曲を聴いたときは、さすがに声が限界か?と思ったけど、何回も聴いてるうちにすごく馴染んできて、ずっと頭の中で鳴っていました。














