【月報】2026/09 寿限無 - 過去・現在・未来
目次
- 美術館
- 本
- ストリートファッションの時代: 今、ファッションはストリートから生まれる。
- ストリートファッション論
- 服飾文化論: 服飾の見かた・読みかた
- SLOW MADEな服づくり
- デザイン解体新書
- インフィニティ・パワー: 宇宙の謎を解き明かす微積分
- 働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」
- 新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング
- 「読者」の誕生―活字文化はどのようにして定着したか
- 印刷に恋して
- 偶然の装丁家
- これからの本屋読本
- 本屋という仕事
- 鏡映反転――紀元前からの難問を解く
- 誤解学
- 「感想文」から「文学批評」へ: 高校・大学から始める批評入門
- 雑学者の夢 (グーテンベルクの森)
- 統計でウソをつく法
- 燃える平原
- 映画
- 音楽
美術館
生誕100年 安野光雅展 - 栃木市立美術館

前半はアメリカ、ニューヨークなどの旅の絵本シリーズと切り絵が展示されており、後半は数学を活かした作品、不可能物体からなるアルファベットや反射する金属の棒から見ると正しく見える絵などが展示されていた。特に後半の展示作品にすごく惹かれた。おそらくエッシャーからの影響だろう作品を見て、自分も参考にして作品を作りたいと思った。
安野光雅さんのことをこの展覧会ではじめて知れたのが良かった。絵本などもたくさん出されているので、集めてみたい。まずはこの本から読みたいかな。
没後20年 ナムジュン・パイク|じゅげむ展 - ワタリウム美術館

ワタリウム美術館には初めていったが、展示方法がすごかった。同館の空間に合わせて制作されたという「ケージの森/森の啓示」や「時は三角形」などのナムジュン・パイクの代表作となるブラウン管での立体作品を実際に観れてよかった。
一番関心したのは「ニュー・キャンドル」だ。実際に灯されている1本の蝋燭をカメラが撮り、複数のプロジェクターでイメージを映す。RGBシフトされた蝋燭があったり、より白く光る蝋燭などの映像がすごく見入ってしまった。
本
ストリートファッションの時代: 今、ファッションはストリートから生まれる。
本書は2005年に出版されたものである。第1章では、1920年から2004年までのストリートファッションの歴史的変遷について見ていく内容となっている。そこからファッションの20年周期についての考察や、東京の街のファッションの変化に触れている。
同じ内容が出てきたり、ただの羅列のように感じられる部分があった。今、ストリートファッションについて読むとしたら次に紹介する「ストリートファッション論」を読むのがいいだろう。
ストリートファッション論
先ほど紹介した「ストリートファッションの時代」を全面改訂したものが本書である。衣服の起源についての話や、ファッションの記号的役割、なぜファッションが生じるかといった、ファッションの根源的な性質について補って書かれている。前作では、文字も小さく読みづらかったが、本書は文字も大きく200ページ弱にまとめられてあり、読みやすくなっている。
しかし、前作もそうだが事例をまとめてあるに過ぎずないので、著者の論といった部分が見えてこない。服装史や東京の都市とファッションの関わりについての知識がない人にとっては事典的なおもしろさはあるのかも。
服飾文化論: 服飾の見かた・読みかた
本書では服飾を時代を映し、社会を映すものとして捉え、衣服を着ることや着心地についての服飾美について論じる。事例のほとんどは日本のものであり、古典などの文学作品に登場する服飾から服飾文化を考える。
最後の章の「服飾を読む」において、人となりを示す服飾描写は、それが作者の意図どおりに読まれれば作中で有効に働くが、誤読されれば人物についても作品全体についても誤解を招く可能性があると述べている。作品成立時には説明なしで読者に感じとられた部分が、時代を隔てて分からなくなってしまう。だが。その時代の文献や資料を丹念に見ることで、服飾描写を読み飛ばしたために見落としていた世界が見えてくる。このことが、服飾研究の醍醐味であると著者は最後にまとめる。
衣服を着ることの意味や、文学作品の服飾に込められた文化的背景について気に留めることができる一冊である。
SLOW MADEな服づくり
ネストローブというファッションブランドによる15周年を記念して出版された本。美しい装丁もさることながら、ブランドの理念や哲学を理解することができる一冊である。ブランドを支える日本各地の工場、職人の方々の仕事を紹介するとともに、今までの人気アイテムもストーリーとともに紹介されている。
自分自身は服に関心がなく、高い服と安い服の違いといったものを知らなかったが、職人の方々の仕事ぶりや、大量生産ではない服づくりの背景を知ることで、服に対する見方が変わりました。ナラティブを読むことで、印象も変わって見ることができる、そんな気づきを得られる本です。
デザイン解体新書
書籍や雑誌などのDTPデザインについての本となっていますが、Webデザインにも応用できる考え方が載っていて、非常に参考になりました。各章の冒頭には、実例となる指定紙が掲載されており、そこにはアプリケーションまかせの作業では実現できない指定の意図が記されており、プロのデザイナーの考え方を学ぶことができました。
Webでは、さすがに動的なものについての文字組みの制御は難しいですが、見出しなどの固定されている部分については、もう少し文字組みを工夫してみたいと感じました。他にも、本づくりの解説もされており、勉強になります。
インフィニティ・パワー: 宇宙の謎を解き明かす微積分
先月、ストロガッツの著書を2冊読んだので、4年くらい積んでいた「インフィニティ・パワー」を読むことができた。読みたいと思った理由は思い出せないが、無限やカオスについて読みたいと思っていたのだろう。読んでみて、確かにタイトルにある「無限」について扱うが、主には微積分についての話だった。
買った当初の期待とは裏切られたが、知らない雑学もあって楽しめた。最初はアルキメデスの話から始まる。彼はすでに積分法の道を開いていたらしい。だが、ガリレオ、ニュートン、ライプニッツなどはその方法を読む機会がなかったようだ。というのも、現存する唯一の写本が見つかったのが1998年だったからである。「アルキメデス写本」と呼ばれる写本がそれであり、気になったのでいずれ読んでみたい。
働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」
「言葉が分かる」「意味が分かる」とはどういうことか、「言葉がわかる機械」をめぐるイタチたちの物語を通じて、機械のこと、人間である私たち自身のことを探っていく。
人工知能についての話でもあり、言語学についての話でもあって、非常に楽しく読めた。私たちが普段行っている、言葉を話したり、理解することが機械にとっていかに難しいのかを実感させられる。この本では機械に言葉を理解させるのに、何が難しくて何が課題なのかを提示されている。昨今のAIの進化で、この課題を乗り越えられて日常会話のようなものができるようになったのかが気になった。
新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング
読書感想などをブログに書くようになって、自分の文章の拙さが気になり始めた。そこで、文章術で評判が良いこの本を読んでみた。著者がナタリーの人で、メディアサイトの事例が多く、ブログや書評のための文章術ではなかったので、教えに同意できない部分はあった。だが、文章術の本を読んだことがなかったので、1冊目としてはためになる部分も多かったのかも。
文章のレビューをされたことがないから、自分の文章の何が悪いのかを知りようがないという怖さも生まれてしまった。これは知識がないからなので、他にも文章術の本を読んで学んでいく必要があると感じた。
「読者」の誕生―活字文化はどのようにして定着したか
2段組で500ページを超える本で、読み進めていくのが大変だった。このタイトルからの想像で、幅広い年代や土地の事例を見ていくのかと思ったが、主に十七世紀、ピューリタン革命期のイギリスを舞台に考察していく。
十七世紀イギリスは宗教改革の時代であるので、本書の前半ではまず中世初期の「イコン論争」の分析からはじまる。聖書もイギリス史も詳しくないので、読み進めるのが難しかったが非常に勉強になった。人びとの意識の変容過程にはメディア以外にも、キリスト教との関連で見ていかなければ理解できないことを知った。
印刷に恋して
1997年から2001年の印刷現場の体験レポート。今では見ることがなくなった、活版印刷や手動写植などの技術や職人たちの仕事ぶりが描かれている。表紙にある内澤旬子さんのイラストもステキです。
感想はこちらにも書いていますので、興味がある方はぜひ読んでみてください。
偶然の装丁家
装丁家である矢萩多聞さんの著書。矢萩さんの経歴は変わっていて、前半は少年時代を振り返り、後半では本づくりや日本でのくらしについて語られている。装丁家としての一冊の本ができるまでの話が印象に残りました。
これからの本屋読本
「本の惑星」というポットキャストを普段よく聴いています。パーソナリティの内沼さんの著書が本書になります。著者自身が実践しているように、「本」と「何か」の掛け算での本屋運営、小さな本屋としての生き方などが語られています。本の仕入れ方についても詳しく説明してあり、これから本屋を始めたい人にとって参考になる1冊でしょう。
本屋という仕事
本書は、コロナ禍での本屋の仕事を見つめ直す中で感じた疑問を、尊敬する書店員の方に教えていただいた本となる。本屋のない場所に本屋をつくること、日々の本屋の仕事のことなどが、10組の書店員の生の声で描かれている。
鏡映反転――紀元前からの難問を解く
鏡に映して見ると、上下反転はしないのに、なぜ左右反転して見えるのか?一見、光学的に答えられそうな気がするが、いまだに難問で定説がない問題なのだ。どの説にも批判があり、矛盾無く説明できる説はない。
著者は、この鏡映反転の現象を多重プロセス理論という自説で説明する。詳しくは本書を見てもらいたいが、鏡映反転は「表象反転・視点反転・光学反転」の3つの現象から成ると論じる。物理的な観点だけではなく、心理的な認知過程も考慮する必要があるのは驚きだ。
実際の鏡に映ったときはどうなるんだろうと考えながら読んでいて、頭が混乱する瞬間も出てきたが、非常に面白い本でした。
誤解学
「渋滞学」で著名な西成活裕氏の著書。「誤解とは、コミュニケーションの流れにおける渋滞のようなものである。」とはじまる。渋滞学でも行っていたように、誤解の理論構築のためにIMV分析というモデルを用いて、誤解の発生メカニズムを分析するのが面白い。
モデル化するまでもないだろうと思わないではないが、一定の条件下での二者のコミュニケーションの最終合意の結果がシミュレーションで予測できるとの話は数理モデルの面白さを感じさせる。
「感想文」から「文学批評」へ: 高校・大学から始める批評入門
タイトルからハウツー本かと思ったが、実際には文学批評が生まれた17世紀ヨーロッパからの六つの型を解説している本だった。
ロマーン・ヤーコブソンの文学批評の六つの型として作家論・ニュークリティシズム・読者論・構造主義・イデオロギー批評・メディアスタディーズを分かりやすく解説する。何が問題で新しい文学批評の型が出てきたかを丁寧に解説してあるので、この分野に詳しくなかったが、入門書として良かった。
雑学者の夢 (グーテンベルクの森)
第一部の記号と構造は、この本を読む前に読んでいた『「感想文」から「文学批評」へ』と関連していて、ロラン・バルトやソシュールについて書かれていて著者の読書遍歴について理解できた。
著書の読書体験を書くという体だが、一般的な読書遍歴を綴る本ではないので、どう読んでいいのか難しかった部分もある。多木さんの著書は読んだことがなかったが、これから読んでみたいと感じた。
統計でウソをつく法
「だまされないためには、だます方法を知ることだ!」とあるように、統計による誤用の例を数式を用いないで説明する。アメリカで1954年に発行されたこともあり、事例が古く感じるが、その当時からいまも統計によるだましは行われていたのを知れる。
知ってる内容が多く、とくにためになるってわけではなかったので、今では別の入門書でもいいのかも。
燃える平原
また読みたいと思い再読した。燃える平原は17の短編集となるが、どの作品にも死といったものがつきまとう。内容をすべて忘れていたが、再読してみてすごく好きな作品群だった。ラテンアメリカ文学の魅力を改めて感じた。
映画
恐怖の報酬(1953)
この2000ドルは運転の報酬だけではない、恐怖に対する報酬でもあるのだ
舞台はベネズエラの場末の街ラス・ピエドラス。そこには職が無く、食い詰めた移民達が暮らしている。そんなある日、500km先の油田で火災が起きた。消火機能を有する消防車などがない街でどうするのか。なんと、少しの振動で爆発するニトログリセリンを用いて爆風を利用して火を消そうとするのである。自殺行為ともいえるトラック運送の仕事は2000ドルの報酬である。主人公マリオたち4人は、一攫千金のために命を懸けて現場へと向かうのだ。その道中では様々な困難があり…。
BGMのない、音もないのに恐さを感じる表現。普通だったらBGMで恐怖を煽るだろうが、無音のなかで、人物の仕草から生じる音だけで恐怖が感じられる表現は素晴らしかった。
U-NEXTで配信されていた、オリジナルネガに基づいた4Kバージョンで観たのだが、映像の鮮明さに驚いた。白黒映画での火災の描写も初めてみたかも。最後は火災現場には辿り着くことができるのだが、そこでの火炎の白黒の明暗が凄まじく印象に残った。
ラストシーンは、非常にフランス映画を感じさせる不条理さを感じた。
音楽
Matilda Mann - After The Love
Matilda Mannは今月はじめて知って、新譜をよく聴きました。新譜はどの曲もシングルカットできるくらいキャッチーで良かったです。「After The Love」はMVも相まってすごく良い曲ですね。これからも注目のアーティストです。
CHVRCHES - Roses
CHVRCHESを久しぶりに聴いたけど、だいぶ初期のシンセポップからの路線が変更していいですね。CHVRCHESはMVも自分好みではあるので、少し掘ってみようかと思います。













